風評被害で医療従事者は人材不足か?
新型コロナウイルスの感染患者数の急激な増加、PCR検査数の急増、医療従事者への感染拡大などにより、医療従事者の不足が指摘されているところだが、「現状の人員」は十分なのだろうか――。
「もともとは比較的に人員が充足していたが、そのときと変わらない」との回答は36%の2303人にとどまり、「もともと人員が不足していたが、そのときと変わらない」が43%の2724人、「もともと人員が不足していたが、さらに感染対策の状況で不足となった」が8%の498人、「もともとは比較的に人員が充足していたが、今回の感染対策の状況で不足となった」が4%の282人、と回答している。
新型コロナウイルスの感染拡大による人員不足が発生したのは12%にとどまっているが、人員不足は過半の55%にのぼっており、医療従事者は慢性的に人員不足であることがうかがえる。感染拡大の第2波、第3波に向けて、人員面での手当を十分に行っておくことも重要な課題と言えそうだ。
さて、新型コロナウイルスの感染拡大によって、医療機関などはさまざまな被害にあっていることもわかった。その具体例の一つとして、381人が「患者・対象者に感染者がいないにもかかわらず、感染者がいると風評が流れた」と回答している。この他にも、142人が「職場自体が被害的な圧力を受けた」、130人が「感染以外の内容を関連付けた風評が流れた」、97人が「職員に感染者がいないにもかかわらず、感染者がいると風評が流れた」と回答している。
新型コロナウイルスでは医療従事者だけではなく、飲食店などさまざまな業種でも風評被害が発生している。政府は風評被害に対する対策を行う必要がある。
調査では、新型コロナウイルスの感染拡大により、「勤務先や職業を理由に不当と思われる経験をしたか」も、聞いている。その回答は、「SNSなどが拡散して、感染しているなどの噂となった」が101人と最も多く、次いで「家族が職場で、風評など不当な噂が流れるなどの扱いを受けた」が57人、「子どもが学校や保育園などで、登校や保育を拒否された」が19人、「子どもが、学校や保育園などでいじめなどの不当な扱いを受けた」も9人にのぼった。さらに、「スーパーなどの買い物などを拒否された」といった回答や、「その他の不当と思われる経験をした」も、272人にのぼっている。
こうした医療従事者を中傷する不当な行動が、医療従事者の人員不足に結び付いている可能性もある。新型コロナウイルスの感染患者にとって、医療は最後の砦だ。もちろん、新型コロナウイルス以外の病気にとっても、医療機関が必要不可欠であることは言うまでもない。
不当な誹謗中傷の類がSNSに流布することは、なにも医療従事者に限ったことではないが、投稿されたメッセージの真偽を確認もせずに「いいね」したり、拡散したりすることは情報の発信者と同じで、医療従事者を追い詰めている。こうした不当な行動はくれぐれも慎むべきだ。(鷲尾香一)