【襲来!新型コロナウイルス】全米にイタリア並み「第2波」到来か? NY発、世界同時株安の可能性を世界のメディアから読み解く

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   米国ニューヨーク株式市場のダウ平均株価は2020年6月11日(現地時間)、米国景気の遅れや新型コロナウイルス感染の「第2波」発生リスクの懸念が高まり、前日比1861ドル(6.9%)安に大幅下落した。過去4番目の下げ幅だ。

   ニューヨーク市場の下落を受けて6月12日、欧州、アジア各地の株式市場も軒並み下落。東京株式市場の日経平均株価も終値が2万2305円となり、前日比167円安に下落した。世界同時株安の様相を呈している。

   6月9日まで、コロナ禍にかかわらず株式市場の上昇を続けてきた米国経済に何が起こったのか。世界と日本の主要メディアの報道から読み解くと――。

  • 世界同時株安に……(写真はイメージ)
    世界同時株安に……(写真はイメージ)
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パウエルFRB議長「回復は長い道のりだ」発言が導火線に

   米ダウウ暴落の発端は、前日の6月10日にFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が行った記者会見だった。「米国の経済は回復にはほど遠い」と市場の楽観論に、ビシッと釘を刺したのだった。ロイター(6月12日付日本語版オンライン版)は、「米株急落、ダウ1861ドル安 新型コロナ感染第2波に懸念」で、こう伝える。

「米連邦準備理事会(FRB)は6月9~10日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で異例の経済支援を継続すると改めて表明。パウエル議長は会見で回復は『(米国経済の回復は)長い道のりだ。しばらく時間がかかる』と語った。また、パウエル議長の『2022年まで金利を据え置く』という表明によって、市場関係者に、『FRBが景気回復ペースへの懸念を深めている』との印象を与えた」

   このパウエル議長発言の直前に衝撃的ニュースが、2つ飛び込んできた。一つは「コロナウイルスの第2波が到来した」という調査データの発表だ。米国ではトランプ大統領の「経済を再開しろ」という強い要請によって、5月初めから経済活動を再開した州が多い。その中でも特に人口が多いテキサス州とフロリダ州、カリフォルニア州などで爆発的な感染拡大が起こっていることがわかった。

   米金融経済総合情報サイト「Bloomberg(ブルームバーグ)」(6月11日付オンライン日本語版)の「米国に新型コロナ第2波の兆し ―フロリダなど一部の州で感染者増加」によると、

「米国の各州が経済活動を再開させる中、一部の州で新型コロナの第2波が起きつつある。テキサス州が6月10日発表した新たな感染者数は2504人と、1日としては最多を更新した。活動を再開して1か月が経過したフロリダ州では今週の新規感染者数が8553人(1日平均1223人)と週間ベースで過去最多となった。カリフォルニア州でも増加し、過去最多を記録した」

というのだ。

   テキサス州の1日の新規感染者が2千数百人というレベルは、イタリアやスペインのコロナ被害のピーク時にほぼ匹敵する。フロリダ州なども併せると、現在のアメリカには、イタリアやスペインがいくつもあるといってもよさそうだ。テキサス州ヒューストンのターナー市長は6月11日、米プロフットボールNFLのヒューストン・テキサンズの本拠地のスタジアムに新型コロナ患者向けの仮設病院を設置すると発表した。

   新型コロナの動向をウォッチしている米ジョンズ・ホプキンス大学は同日、「米国全体の感染者数は200万人を超えて201万人に達した。米国の一部の地域に新たな波が到来しつつある。現在は遠いところにある小さい波だが、近づいている」とした。

   また、Bloombergは、

「白人警察官による黒人暴行死事件に端を発した全米の大規模抗議デモが感染者数の増加につながったかどうか判断するには時期尚早だと医療専門家はコメントしている」

とも伝えており、逆に全米に拡散した黒人暴行死事件に対する抗議デモが感染拡大に関係あるのではないという見方があることを示唆していた。

黒人、アジア人の失業率が高い格差も不安材料に

   もう一つのショックなニュースとは、失業率の増加だ。じつは6月9日まで米国の株価が上昇し続けた理由の一つに、5月末に発表された失業率が13.7%と前月より1.4ポイント減って、雇用が好転したと評価されたことがあった。市場では失業率が20%くらいいくのではと見ていたから、一気に株価が上昇した。しかし、雇用の内実はそんなに甘いものではなく、深刻な問題を抱えているとわかったのだ。

   ロイター(6月11日付オンライン日本語版)の「米失業保険申請154万件、10週連続減 受給数なお2000万超」が、失業者が主に黒人層に偏っている米国経済の歪みを、こう報告している。

「米労働省が6月11日発表した6月6日終了週の新規失業保険申請件数は154万2000件となった。企業のレイオフ(一時帰休)が減ってきたとはいえ、引き続き数千万人が失業手当を受けており、新型コロナ禍に見舞われた労働市場が回復するには何年もかかる恐れがある。先週末に発表された5月の雇用統計で雇用者数が250万人増加したことから、最悪期を乗り切ったとの見方が強まった。オックスフォード・エコノミクス(ニューヨーク)のエコノミスト、ナンシー・バンデン・ホーテン氏は『労働市場はトラウマとなる打撃を受けており、完全な回復は数カ月ではなく、数年単位で測られるだろう。統計内容はコロナ禍が労働者に及ぼす影響を完全に映していない』と述べた」

   失業者全体は減っているのに何が問題なのか――。ロイターはこう指摘する。

「5月の米失業率は市場予想に反して低下した。だがすべての労働者がその恩恵を等しく受けたわけではない。黒人やアジア系の失業率は上昇しており、新型コロナ感染拡大でいったん休止した経済活動の再開に伴う雇用回復の流れは、一部のマイノリティーには遅れて波及していく」

   ロイターが続ける。

「白人警官による黒人暴行死事件を巡り、全米で抗議デモが行われているまさに今、雇用で人種格差が存在することがデータで確認された。人種別の失業率の4月から5月の変化を見ると、黒人は16.7%から16.8%に、アジア系は14.5%から15.0%にそれぞれ上昇した半面、白人は14.2%から12.4%に下がった。失業率を算出する家計調査では、5月の新規就業者数は380万人で、就業者総数は前月比2.9%増加した。ところが増加率はやはり白人が3.3%だったのに黒人は1.7%にとどまった。景気回復局面において、黒人の雇用改善は遅れる傾向にあることが改めて浮き彫りになった」

   そして、ロイターはこうした黒人やアジア人が食料品店や飲食店、流通部門などの働き手としてだけでなく、消費者としても米国経済を支えており、彼らの雇用事情の悪化が今後、ボディーブローのように米国経済に響いてくると指摘するのだった。

パウエル氏が「黒人暴行死」に触れたのは自責の念から?

ドル売りも加速か(写真はイメージ)
ドル売りも加速か(写真はイメージ)

   黒人問題といえば、朝日新聞(6月12日付)の「米ゼロ金利継続『日本化』懸念 FRBパウエル氏、人種問題に言及異例」が興味深い内容を伝えている。FRBのパウエル議長が記者会見で、白人警官の黒人男性暴行死事件について語ったというのだ。

「パウエル氏は人種問題への特段の配慮も示した。『人種をめぐる不正義の痛みに当てた悲劇的な出来事を受け止めたい』と指摘した。従来、トランプ大統領に対しFRBの独立性を保つため政治的な発言は避けてきた。今回の発言は中央銀行トップとしては異例だ」

   朝日新聞は、パウエル氏がなぜこんな発言をしたのか、こう説明する。

「FRBの危機的対応は金融システム不安を避けるためだったとはいえ、株価を支え、富裕層を潤した。株式を持つ割合は白人の6割に対し、黒人は3割にとどまる。選挙による信任を受けていないパウエル氏にとって、独立性の維持には世論の支持が欠かせない。パウエル氏は『(株式など)資産価格を一定の水準に到達させる政策はとっていない』と強く訴えざるをえなかった」

   コロナ危機以前も、米大企業はFRBの緩和で調達した資金を「自社株買い」に費やし、株価上昇につなげて資産を増やした。その恩恵を受けた投資家の損失を結果的にFRBが埋め合わせてきたわけだ。そうした自責の念がパウエル氏にあったのか、どうか。朝日新聞はこう結んでいる。

「企業は今後、雇用や労働者の教育訓練を切り詰めそうだ。(FRBの危機対応によって)格差や社会不安が増幅されれば、中長期的な成長力がそがれ、さらに悪循環に陥ることになる」

「株価は上昇するだけ」と信じた素人が米国相場を上げてきた

   さて、最後にこんな記事を紹介したい。これまでの米国の株式相場がいかに「いい加減な投資家」によって上がられてきたか、米の金融経済総合情報サイトのBloomberg(ブルームバーグ)の「『株価は上昇するだけ』が裏目、2兆ドル吹き飛び個人投資家に痛み」(6月12日付日本語版オンライン)という記事が、こう皮肉っているのだ。

「ツイッターやチャットルームでポピュラーになった『株価は上昇するだけ』を信じて米国株上昇に賭ける戦略に最近転向した人は、これが思ったほど万全な戦略ではなかったことを思い知らされた。この戦略は、6月11日の米株式市場で痛烈な否定に見舞われた。S&P500種株価指数は約6%下落し、時価総額2兆ドル(約213兆円)近くが吹き飛んだ。売りが特にかさんだのは航空やエネルギー、銀行など、ここ1か月で株式に殺到した多くの個人投資家(小口トレーダー)が選好してきた業種だった。
彼らは初めて大きな痛みを味わうことになった。ボストン・パートナーズのグローバルマーケット調査ディレクター、マイク・マレーニー氏は『個人投資家がこのトレードに比較的大きく殺到した。彼らの今の気分は最悪で、これが持続的な動きなのかと疑問に思っている』と述べた」

   そして、Bloombergはこう指摘する。

「一部の市場では6月11日のような大暴落の日は、バーゲンハンター(編集部注:割安株を買いあさる投資家)を誘う可能性があるが、同日の展開によって特に相場が割安になったわけではない。11日の相場急落後も、S&P500種の予想株価収益率(PER)は、新型コロナ感染拡大に伴う相場下落が始まった2月の水準よりも依然13%高い。安くはなったものの、バーゲンハンターが通常出現する水準には至っていない」

   つまり、もう素人サンには退場願ってもらうとして、これからは我々プロの投資家に任せなさない、ということのようだ。

(福田和郎)

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