パウエル氏が「黒人暴行死」に触れたのは自責の念から?
黒人問題といえば、朝日新聞(6月12日付)の「米ゼロ金利継続『日本化』懸念 FRBパウエル氏、人種問題に言及異例」が興味深い内容を伝えている。FRBのパウエル議長が記者会見で、白人警官の黒人男性暴行死事件について語ったというのだ。
「パウエル氏は人種問題への特段の配慮も示した。『人種をめぐる不正義の痛みに当てた悲劇的な出来事を受け止めたい』と指摘した。従来、トランプ大統領に対しFRBの独立性を保つため政治的な発言は避けてきた。今回の発言は中央銀行トップとしては異例だ」
朝日新聞は、パウエル氏がなぜこんな発言をしたのか、こう説明する。
「FRBの危機的対応は金融システム不安を避けるためだったとはいえ、株価を支え、富裕層を潤した。株式を持つ割合は白人の6割に対し、黒人は3割にとどまる。選挙による信任を受けていないパウエル氏にとって、独立性の維持には世論の支持が欠かせない。パウエル氏は『(株式など)資産価格を一定の水準に到達させる政策はとっていない』と強く訴えざるをえなかった」
コロナ危機以前も、米大企業はFRBの緩和で調達した資金を「自社株買い」に費やし、株価上昇につなげて資産を増やした。その恩恵を受けた投資家の損失を結果的にFRBが埋め合わせてきたわけだ。そうした自責の念がパウエル氏にあったのか、どうか。朝日新聞はこう結んでいる。
「企業は今後、雇用や労働者の教育訓練を切り詰めそうだ。(FRBの危機対応によって)格差や社会不安が増幅されれば、中長期的な成長力がそがれ、さらに悪循環に陥ることになる」