コロナ禍が決定打 「made in USA」の象徴 あのブルックス・ブラザーズが街から消える日(井津川倫子)

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Zoom就活で「ブルックス離れ」に拍車が......

   ニューヨーク・タイムズ紙の記事は「国内工場の閉鎖」に焦点を当てていましたが、メディアの目を引いたのは経営状況の悪化ぶりでした。ブルックスが最近融資を受けたとされる投資会社ゴードン・ブラザーズは、店舗の閉鎖や破たん処理、企業の清算に関するプロで、今回の融資は「精算手続きが前提だろう」と推測されているのです。

   残念なことに、コロナ禍でJクルーのような大手アパレルが次々と破産に追い込まれている状況では、たとえブルックスのように米国人にとって特別な「レガシーブランド」でも、買い手はなかなか現れないだろう、という見立てが主流です。

   それではなぜ、米国の「レガシーブランド」であるブルックスが破産の危機にあるのでしょうか?

   前の親会社である英高級スーパーのマークス&スペンサーの傘下で、カジュアル路線を進めていたブルックスを「救った」とされるのが現CEOのベッキオ氏です。

   ベッキオ氏は品質向上を図り、高級カジュアル路線を「復活」させて、しばらくは右肩上がりの経営が続いていましたが、リーマン・ショック後に急激に押し寄せてきた「カジュアルフライデー」やIT企業の「Tシャツ文化」の波には勝てなかった様子。

   確かに、フェイスブック社のザッカーバーグ氏に代表される「最近のエリート」は、「ハレの日にブルックスを着る」習慣も価値観もなさそうです。

   さらに、追い討ちをかけたのがコロナ禍による「ニューノーマル」の波です。在宅勤務が広がってオフィスウェアが必要なくなったり、結婚式が次々とキャンセルになって「ハレの場」が消えたりしてしまいました。

   就職活動のオンライン化が進み、「Zoom」による面接が浸透したことも大きな打撃だと分析されています。

   確かに、「ニューノーマル」な世界ではコンサートやディナーといった「ハレの場」は敬遠される一方です。どんなに愛着があるブランドでも、着ていく場所がなければ買わないですよね。

   ニューヨーク市の工場で製造されているブルックス社のネクタイラベルには、星条旗と「ブルックス ブラザーズ。誇りとともにアメリカ合衆国ニューヨークで製造」との言葉が刺繍されているそう。コロナ禍でまた一つ、大切な灯火が街から消えてしまいそうです。

   それでは、「今週のニュースな英語」はフォーブス誌の見出しから「on the edge of~」(~の寸前)を取り上げます。「edge」は「ふち」とか「端」という意味。ギリギリの状態にあることを表します。

We are on the edge of bankruptcy
(私たちは倒産の瀬戸際にいる)

My father is on the edge of death
(父が死のふちに立たされてる)

That animal is on the edge of extinction
(その動物は絶滅の危機にある)

   新型コロナウイルスが経済に与える影響は、これから本格化するとみられています。自粛の世界を通り抜けた今、私たちはどんな「edge」に立たされているのか。全容が明らかになるのが恐ろしいと感じるのは私だけでしょうか。(井津川倫子)

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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