社長業を継承した3代目がコロナ禍でみせた手腕 有事対応でわかった「2つ」のリーダーシップの形を使い分ける術(大関暁夫)

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「災い転じて......」新社長がとった有事対応とは?

   Oさんには大企業の総務時代、業務プロセス作りの経験があったのです。そこで彼は今回、手際よく有事に必要な対応業務のプロセスを決め、まず全体方針を社内に開示。そのうえでチーム分けを実施し、チーム別作業の稼働やテレワーク導入に向けた準備を進め、社内体制とルールを構築、パーテションなどの物理的な感染予防の対策を講じ、コロナ対応営業体制の徹底を図ったのです。あらゆる有事対応策を手際よく決定し指示を出し、他社に先駆ける形でスムーズに有事体制への移行を実現したのです。

   現在もS社は、この新社長がリードして構築した体制下で、長期化が予想される「ウィズコロナ」期に粛々と立ち向かっています。結果、業績も大きな落ち込みもなく、至って順調に推移しています。そしてO社長にとって、何よりの大きな成果がありました。

「コロナは我々にとっても大変脅威であり、ありがたくない存在ですが、じつは今回のコロナ対策検討を通じて社員の私を見る目が変わってきたというか、以前にはなかった信頼感をもって皆が付いてきてくれているという実感が持てるようになりました。火事場のバカ力が功を奏したような、そんな気分ですね」

   O社長は、そう言って嬉しそうに笑いました。

   どうしたら自分にもっと求心力が得られるかと悩んでいたO社長。突然襲ったコロナ危機という有事の中で、社長自らが自信をもって社員をリードしたことで道が拓けました。

   これまでは「支援型リーダーシップ」一辺倒で、ややもすると心許ないイメージだったのが、「支配型リーダーシップ」が有事と相まって思わぬ形で発揮され、好結果につながったといえます。

   O社長は、自分に欠けていた、もう一つのリーダーシップを思いがけず手に入れたわけですが、これからはこの2つのリーダーシップを上手に使い分けることで、先代以上に求心力の強い経営者になれるだろうと確信した次第です。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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