社長業を継承した3代目がコロナ禍でみせた手腕 有事対応でわかった「2つ」のリーダーシップの形を使い分ける術(大関暁夫)

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社長あっての「副社長」として有効だった

   ところが、Oさんが社長に就任して2~3か月経つ中で、社員がまだ新リーダー体制に慣れていないのか、あるいは副社長時代のイメージから抜けきらないのか、「社長としてみてくれていない」という状態が起きてきてしまったようなのです。

   先代はといえば、会長職にはあるものの70代後半という年齢と、体調も万全ではないという事情もあって、実権はすっかりOさんに譲り、出社日数も減って、社員にとって技術的な拠り所ではあり続けながらも経営者としての存在感はほとんどなくなっている、とのことでした。

   すなわち、新社長の管理に横ヤリを入れる者がいないので、新体制固めを邪魔するものはないはずなのですが......。これは、もしや先代がワンマン社長で存在感が強すぎたのかとも考えましたが、聞けばまったくの職人的技術者とのことなので、表面上は強いリーダーシップを持ったトップというわけではなさそうです。

   ただ、技術に関しては社員たちからの圧倒的な信頼感があり、それによって地位と求心力を確立していたという感はうかがい知れました。

   Oさんのコミュニケーション重視のやり方は、職人肌でコミュニケーション下手の社長を補完する意味ではS社にとってかなり有効だったとは言えます。言ってみれば、あくまで社長が存在する前提でのナンバーツー副社長としての求心力が得られていたということだったのでしょう。

   トップとナンバーツーでは、一般的にリーダーシップのあり方が異なります。「支援型リーダーシップ」が悪いわけではありませんが、それ一辺倒ではトップとして物足りなさは否定できないのです。

   なので、O社長には徐々にそのあたりを変えていってもらおうと思ったわけですが、そんな矢先に新型コロナ危機が勃発しました。

   平時がいきなり有事に。感染防止に向けた社内ルールをどう決めるか、テレワーク導入をどう進めるか、勤務体制をどう組むのか、相手と面談できない状況下で営業体制はどうするのか......。山盛りの対処事項を前にして、どうなることかと思いきや、Oさんの過去の経験が思わぬ力を発揮しました。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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