あなたの手元には、「10万円」が届いただろうか――。新型コロナウイルスの影響で仕事が減ったりなくなったりと、人々の生活が脅かされるなか、給付金の支給がはじまった。
その一方で、「なかなか支給されない」「連絡すら来ていない」などといった人が少なくなく、自治体などへの問い合わせが増えている。
国民生活センターが開設した「新型コロナウイルス給付金関連消費者ホットライン」には、2020年5月1日~31日までの1か月間に、2835件もの相談が寄せられた。そのうちの2721件と、9割以上が給付金の申請方法などに関する内容だったが、詐欺が疑われる相談も51件が寄せられていたことがわかった。2020年6月2日に発表した。
「役所が混んでいるから...」早くもらいたい気持ちに付け込む
国民生活センターによると、5月に「消費者ホットライン」で受け付けた給付金関連の問い合わせを週ごとにみると、第1週目の5月1日~7日は432件で、翌週の8日~14日は465件増えて897件。さらに、第3週目は777件増の1674件と大幅に増加。第4週目は804件増の2478件だった。第5週目は、29日~31日の3日間だけで243件も増えた。
一方、詐欺が疑われる相談は、第1週目が12件で翌週は10件、第3週目は再び12件、第4週目は8件で、第5週目は29日~31日の3日間ですでに9件も寄せられており、増加傾向がみられた。
相談内容には、電話や郵便、SNSを利用したり、なかには自宅に訪問したりするケースもあっという。国民生活センターがまとめた相談事例をみると、
「自宅に男性から電話があり、『給付金申請で役所が混んでいる。マイナンバーカードを貸してくれれば代行申請をしてあげる』と言われた。自分でやると断って電話を切ったが、詐欺だと思う」(60歳代女性)
「自治体職員を名乗る女性から『給付金は申請したか』を聞かれ、まだだと答えると、『代わりにしてあげる』とのこと。銀行口座が必要かと尋ねると、途中で男性に代わり、『個人情報は持っている』と言われた。どうすればよいか」(80代男性)
「『市役所です』と電話があり、『給付金の手続きに3000円の手数料がかかる』と言われた。自治体からはまだ申請書が届いていない」(50歳代男性)
「オンラインで申請し、すでに受付番号が発行されているが、知らない男性から『受付番号が届いていない』『まだ支給する手続きの順番が来ていない』と電話があった。数日後にまた電話があり、振込口座を聞かれたので答え、『いつ振り込まれるのか』を聞いたところ、切られた。どうすればよいか」(60歳代男性)
「申請書類を郵送した翌日に、『銀行口座の本人確認』というSNSが届いた。記載されていたURLを開いて口座番号、暗証番号を入力し、完了したが、何も返信がない。息子に相談したところ、詐欺にあったのではないかと言われた」(60歳代女性)
といった声が寄せられている。
ネット詐欺が疑われる内容のメールが届いた事例は、まだある。自分の利用している銀行から「定額給付金の振り込みは当行へ」と記載されたメールや、給付金が早く簡単に受け取れる「フリーメール利用者専用の窓口」などの内容には、十分注意が必要だ。
いずれも、自治体や申請手続き代行など、正当なふりをして自宅を訪れたり、電話やメールで「給付金の手続きに必要」などとウソの説明で個人情報や金銭を騙し取ろうとしたりするケースが多いようだ。マイナンバーカードなどの個人情報や、口座番号、キャッシュカードの暗証番号は、決して他人に教えてはいけないし、ましてや、通帳やカードは絶対に手放してはならない。
また、市区町村や総務省などが、ATMの操作を依頼したり、手数料の振り込みやメールのURLをクリックして申請手続きを求めたりすることは、絶対にありえない。
国民生活センターでは、もし「怪しいな?」と思ったら「ホットライン(188)」のほか、近くの警察や市区町村などに相談するよう、呼びかけている。