政府よりもはるかに早く動く株価、そのワケは?
政府が緊急事態宣言を発動したのは4月に入ってからのことだったが、株式市場が底をつけたのは3月中旬で、感染拡大が実感を伴って伝わってくるより、はるかに早かった。株価は景気判断の先行指標と呼ばれているが、まさに近い将来を示唆するような値動きをしていたといえるだろう。
理由として考えられるものの一つは、市場参加者が将来を予測して株式の売買を行っていることだ。とりわけ、機関投資家は多くの場合、他者の出資金(投資信託を購入した個人投資家のお金など)を運用しているため、解約を通告されれば、必ず応じなければならない。解約に応じるためには、通告を受けてから保有している株式を売却して現金化するか、または(金融危機や自然災害を受けた)相次ぐ解約を見込んであらかじめ株式を売却するなどの対処法が考えられるだろう。
実際、2018年末の世界的な株価急落では、米アップル社など一般的に優良企業とされる会社ほど、激しく下落している。米アップル社は、2018年10月の高値から翌年1月の3か月で約40%下落した。その後、底値をつけてから1年以内に2018年10月の水準を回復している。
このような構造を考えると、個人投資家にとって株価急落はある意味チャンスといえる。機関投資家が一斉に手放した保有銘柄は、「バーゲンセール」ともいえるだろう。しかも、株価が50%下落するようなとき、たとえば1000円だった株が500円に下落したときに、元の水準に戻るときの株価上昇率は50%ではなく、100%である。株価は倍になるからだ。
むろん、急落した株価がいつもすぐに元に戻るわけではない。例を挙げると、2008年のリーマン・ショックの場合、2007年夏の高値である1万8000円台を回復したのは、2015年になってからだった。
「相場に絶対はない」というが、ときには不安に飲み込まれずに株式を買う勇気も必要だろう。ワイドショーを見ていると、不安から株を買う気にはなれなかったかもしれない。だが、いつの時代も株価の急落は起こり得るものだ。だから、次なるチャンスに備えて然るべきタイミングを待ちたいのだ。(ブラックスワン)