火だねが完全に日本国内から消えることは難しい
新型コロナをめぐっては、2020年が明けるのと前後して中国発の情報がもたらされるようになり、春節直前の1月後半に中国国内で移動や社会活動が制限された。日本への上陸が心配され、国民の注目は中国に向けられていたところで、こんどは、横浜港に入港予定のクルーズ船内で感染者発生の疑いが伝えられる。そして、視線は一斉にクルーズ船に向かった。
当時、国内の感染は拡大の途上にあったけれども、まだそれほど深刻化していない。このころには新型コロナといえば、クルーズ船のことを気にしながらも、多くの人が注目していたのは、今夏に開催予定の東京五輪・パラリンピックのゆくえだった。
このように新型コロナというと、当初の関心の的は、いわば関連のことばかりで、ウイルスの深刻さに向き合うことは後回しになってしまった。こうした経緯や、諸外国に比べて被害の度合いが低いこともあり、「ウィズコロナ」といっても、どこか他人事になっているようなのだ。
著者は、こう警告する。
「そこでの人の移動がある限り、今後も(新型コロナウイルスは)散発的に広がり、やがて場所によっては感染が燃え上がるように発生することがあるだろう」
また、こうも述べている。
「火だねはいったんおさまったとしても、完全に日本国内から消えるということはかなり難しいだろう。特に若い人について軽症であることから、知らない間に感染が広がる可能性がある」
本書では「ヒトが感染するメカニズム」を詳しく説明し、そのリスク算定、感染保護具の選び方を解説。企業の危機管理体制の作り方や従業員・顧客をどう守るかなどから、サプライチェーンの影響の想定、感染による就業禁止や業務中の感染の場合の賃金補償など事業に関わる細部にまで踏み込んで述べられている。
「企業のための新型コロナウイルス対策マニュアル」
和田耕治著
東洋経済新報社
税別1800円