「ドクターX」は、なぜ必ずヒットするのか? 日本人ならみんな大好き「女×孤高の存在×すごい実力」の法則とは(生野あん子)

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   全6シリーズ、1作も「失敗」しなかった名作――。いやあ、何度見てもおもしろいですね。米倉涼子主演の大人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」シリーズ。コロナ禍の影響で、「おうち時間」を過ごすことが長くなっている昨今、過去のドラマを「イッキ見」している方も多いでしょう。

   なかでも、「ドクターX」全6作は、多くの動画配信サービスで人気のよう。改めて見返すと、その人気の理由は「女主人公×孤高の存在×すごい実力=ヒット作」の法則に倣っていることがわかります。

  • 「ドクターX」全6作は大人気だった(写真はイメージ)
    「ドクターX」全6作は大人気だった(写真はイメージ)
  • 「ドクターX」全6作は大人気だった(写真はイメージ)

痛快! 古い組織を女性が変える

   人気の理由をさぐると、まずは主人公が女性であること。「私、失敗しないので」が決めゼリフの天才フリーランス外科医、大門未知子は、旧態依然とした大学組織の医師(もちろん、ほぼ男性というか、組織に囚われたおじさんたちです)を圧倒していきます。

   その様子は、「旧組織をぶっ壊す新しい風」を鮮やかにイメージさせ、視聴者に爽快感を与えるんですね。

   大門未知子は上司に媚びず、古い空気に染まりません(=孤高の存在)。それはとりもなおさず、手術の腕前が突出しているからですが(=すごい実力)、古めかしい因習に囚われたおじさんたちの中に紅一点(=女主人公)という設定が、これらの設定を鮮やかに際立たせるのです。

   閉塞感で押しつぶされそうな、現代のビジネスマンにとって、大門未知子はまさに「ヒーロー的存在」。女性がそれをやるからこそ、わかりやすく「組織VS個人」の対立を描くことができる面はあるでしょう。

   そして、その源流は前回書いた篠原涼子さん主演のドラマ「ハケンの品格」にも見られるのです。

   参考リンク:J-CAST会社ウオッチ「えっ、その時給、安すぎじゃないですか...... 『ハケンの品格』の大前春子は時給3000円 !」(2020年4月23日付)

スキルさえあれば、生きたいように生きられる!

   2007年に大ヒットした「ハケンの品格」は、さまざまな資格をもつスーパー派遣社員、大前春子(=女主人公×すごい実力)が、古い体質の会社組織を変えていくストーリーでした。

   「生きていくための技術とスキルさえあれば、自分の生きたいように生きていける」と言い、自分の能力一本で組織を変えていく(=孤高の存在)春子。

   彼女の存在が、視聴者にとってはある種の希望というか、「こうなれたらいいなあ」という憧れも込みで、称賛されたんですね。時代遅れの組織に新風を巻き起こす、まさに現代のヒーロー、ヒロインです。

   馴れ合いにこだわる男社会に対して、最後は孤高の主人公が「勝ち」、視聴者はスッキリ爽快な気分に。この構造をもつドラマは、ほぼ確実に高視聴率をマークするといってよいでしょう。

   「ドクターX」シリーズは、2019年で第6作目となり、これで最後と言われているそうです。が、根強いファンからは第7シリーズも待望されていますし、「リアル」でも、このタイミングで大手芸能事務所を退所した米倉涼子さんの今後が注目されるところ。まさに「孤高の主人公」感のある女優さんですが、ファンとしてはぜひ、続編を見たいものです。(生野あん子)

「私、失敗しないので」の決めゼリフはあまりに有名
「私、失敗しないので」の決めゼリフはあまりに有名

◆ 「Doctor-X 外科医・大門未知子」 ◆
テレビ朝日系。2012年スタートの「木曜ドラマ」(21時~21時54分)シリーズ。主演は、米倉涼子。特定の病院や医局に属さない、フリーランスの女性外科医、大門未知子の活躍を描く。「私、失敗しないので」「致しません」の決めゼリフが一世を風靡。
大門が所属する神原名医紹介所の所長兼マネージャー、神原晶役に岸部一徳、所属のフリーランス麻酔科医、城之内博美役に内田有紀、帝都医科大学付属病院の第ニ外科部長・教授、蛭間重勝役を西田敏行(シーズン2から6まで)が演じている。

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生野あん子(しょうの・あんこ)
30歳代の会社員。映画、小説、ドラマなど、どんなコンテンツにもつい、社会的背景を思い描いて批評しようとする精神性の持ち主。
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