日本と韓国の激しい対立の引き金になっている徴用工裁判をめぐる問題で、韓国の裁判所が差し押さえた日本企業の現金化をはかる手続きを一気に進めることが明らかになった。
韓国の公共放送KBSが2020年6月3日、「相当期間止まっていた資産売却手続きが急激に進む」と報じたのだ。
仮に資産が売却されたら、日本側が強力な報復措置に出るのは必至で、日韓の対立はガチンコの全面戦争に突入する。いったいどうなるのか。日韓のメディアの論調から読み解くと――。
日本側が1年5か月も裁判所命令を無視できた不思議
徴用工裁判の被告企業、日本製鉄(旧・新日鐵住金)に対する差し押さえた資産の現金化の動きを報じるのは、中央日報(2020年6月4日)「韓国裁判所、日本製鉄の資産差し押さえ...売却手続きにまた一歩」だ。
「韓国の裁判所が、強制徴用被害者に対する大法院(最高裁判所)の賠償判決に従わないでいる日本企業に対して、資産売却のための事前手続きに入った。大邱(テグ)地方法院浦項(ポハン)支院は、日本製鉄に韓国人強制徴用被害者賠償のための資産差し押さえ書類などを公示送達したと6月3日、明らかにした。公示送達期限である8月4日午前0時を越えて日本側から何の反応がない場合、押収した日本製鉄の国内資産に対して現金化命令を下すことができる」
そして、こう続ける。
「茂木敏充外相はこの日、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官と行った電話会談で、資産現金化問題に対して『深刻な状況を招く』と警告した。日本は資産現金化措置に対応して韓国に対する金融制裁、韓国側資産の差し押さえ、韓国製品の関税引き上げなどを2桁の報復措置を準備していると日本メディアがこれに先立ち報道した」
と、一触即発の状況を伝える。
韓国大法院は2018年10月に強制徴用被害者4人が新日鐵住金を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で会社側に被害者1人あたり1億ウォン(890万円)ずつ賠償金を支給うよう命じる確定判決を下した。代理人団は確定判決に基づいて浦項支院から日本製鉄が保有している株式97億3970万ウォン(約8億7300万円)の差し押さえ命令を受けている。
ただし、手続きを進めるには被告の日本側に決定命令を送り、受領したという証明がなければならない。ところが、日本の外務省と日本製鉄は昨年(2019年)2月以来、何度も送達要請書を受領したのに、韓国側に送り返し続けたのだった。つまり、判決が確定してから1年5か月の間、日本側が命令書を無視し続けたから現金化ができなかったというわけだ。
そこで、裁判所は「公示送達」という手続きに踏み切った。これは裁判所が「書類を裁判所が保管しているから、受領せよ」と知らせるもの。書類をホームページ上などに公開掲示した後、一定期間が過ぎれば訴訟当事者に書類が伝えられたとみなす。その期限が8月4日というわけだ。1年5か月もの長い期間放置せずに、最初からそうすればよさそうなものだが、そこには文在寅(ムンジェイン)大統領政権の「政治判断」が働いたと、日本と韓国メディアの多くがみている。