互いに新型コロナウイルスの感染拡大の被害を受けて、小休止状態と思われていた日韓経済戦争が再び火ぶたを切りそうだ。
2019年7月、日本の半導体部品輸出規制(輸出管理強化)で開戦したが、第2ラウンドは、その日本側の措置を「違法」だとして韓国側がWTO(世界貿易機関)に提訴することで突入する。
折しも、再燃した日本製品不買運動により日産自動車、デサント、オリンパスなどの日本企業が続々と韓国撤退を余儀なくされている。いったい、この泥沼の対立はいつまで続くのか。韓国紙で読み解くと――。
GSOMIAを再び終了するカードをチラつかせ...
韓国政府のWTO(世界貿易機関)への提訴発表を、2020年6月2日付の聯合ニュース「韓国政府、輸出規制巡りWTO提訴手続き再開 『日本が解決意思見せず』」が、こう伝える。
「日本が昨夏から韓国に対して取っている輸出規制強化の措置を巡り、韓国政府は6月2日、WTOへの提訴の手続きを再開すると発表した。産業通商資源部の羅承植(ナ・スンシク)貿易投資室長は会見で『日本政府が問題解決への意思を見せておらず、懸案解決のための議論は進展していない。今の状況はWTOでの紛争解決手続きを停止する条件だった正常な対話の進行とは見なし難いと判断した』と理由を説明した」
韓国政府はこじれにこじれた日韓関係に業を煮やし、昨年、日本による半導体材料3品目の対韓輸出規制強化は不当としてWTOに提訴。両国は2国間協議を行ったが平行線に終わった。そして、さらに日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了通告という禁じ手まで持ち出して日本に圧力をかけようとしたが、米国が待ったをかけた。しかたなく、WTOへの提訴手続きを停止。GSOMIAの終了通告も取りやめた。
そのかわり、日本側の「誠意ある対応」を期待して、今年5月31日を最終期限とする回答を求めたのに、何の返事もなかったというわけだ。青瓦台(韓国大統領府)の高官は、GSOMIAを再び終了するカードを切ることも匂わせている。
聯合ニュースは再び日韓関係が悪化すること心配する。6月2日付の「韓国が日本のWTO提訴再開へ 関係悪化避けられず」が、こう伝えている。
「韓国政府がWTOへの提訴の手続きを再開すると発表したことで、両国の対立が再び激しくなる様相を呈している。韓国政府は日本との対話を続けるとの立場だが、規制強化は日本企業に賠償を命じた韓国大法院(最高裁)の強制徴用判決に端を発するため、同問題の解決に見通しが立たない状況では、輸出規制を巡るあつれきも当分続くとの見方が出ている」
さらに、
「日韓問題の専門家らは、日本の規制強化は韓国大法院の強制徴用判決に対する報復として始まったため、強制徴用判決問題に進展がなければ、日本が規制強化を撤回することはないと見る向きが多い。韓国大法院の賠償判決により差し押さえられた日本企業の資産が年内にも現金化される可能性があるため、それに対する備えとして日本側は規制強化を維持するとの見方だ」
と続ける。
つまり、日本は賠償判決で差し押さえられた日本企業の資産が現金化された時のカードとして、規制強化を続けているというわけだ。一方、聯合ニュースは、安倍政権の「苦しい立場」を、こう推測している。
「安倍政権は新型コロナウイルスへの対応への不備などの理由で支持率が大きく落ちた状況にあり、当時(日本の世論から)支持を得た輸出規制をこの状況で撤回するのを避ける可能性がある」
ここでうかつに輸出規制を撤廃すると、安倍政権の支持基盤である保守層から見放されるというわけだ。