新型コロナウイルスの感染拡大を防止するための必需品、「マスク」。緊急事態宣言が解除された「新しい生活様式」の段階に入っても、飛沫を防ぐマスクの着用は欠かせない。
しかし、感覚過敏の人たちにとっては、ふつうの人が手軽に着けられるマスクすら、苦痛な場合がある。
そんな感覚過敏の人たちのため、「中学2年生」社長が立ち上がった。株式会社クリスタルロードが運営する「感覚過敏研究所」が、マスクやフェイスシールドを着けられない人のための「意思表示カード」を考案。インターネットで無料配布しており、評判になっている。
同じ悩みをもつ人の役に立ちたい
中学2年生の加藤路瑛(かとう・じえい、14)さんが社長と務め、母親の咲都美さんが代表取締役に就くクリスタルロードは、親子起業のスタイルで2年前に設立した。路瑛さん自身が、学校の給食後の教室や、街中の食べ物が入り混じるようなニオイで頭痛を訴えたり、からだの不調を感じたりするなど、嗅覚が過敏だった。
「同じように感覚過敏がある人の役に立てるのではないか」(路瑛さん)と、会社設立を機に感覚過敏研究所を立ち上げ、所長に就いた。
研究所のメンバーは、SNSで集まった25人。それぞれに何らかの過敏症に悩む、さまざまな職業の人たちだ。
じつは、今回の「意思表示カード」をつくるきっかけになったのもSNSだった。緊急事態宣言が発令されてから、しばらくした後の2020年4月下旬、マスクを着けていない子どもを連れた客を指し、「汚客様」とあてこするイラストとツイッターを発見。このツイートに、触覚過敏でマスクを着けられない子どもを持つとみられる親からの悲しみを吐露するツイートを見つけた。
感覚過敏の一つ、触覚過敏があると、マスクが肌に触れる部分が痛くてつらい場合があり、中には耐え難い苦痛を感じる人もいるという。
「小さい子どもに我慢させて着けさせるのは難しいかもしれません。親だって、子どもにマスクを着けてもらいたいと思っていても、それができないから苦渋の決断で『マスクなし』で外出しなければならない時があるのです」
そう考えた路瑛さんは、何かできることはないかと考えて、感覚過敏を示すカードの制作を思い立ち、すぐにとりかかったという。