【襲来!新型コロナウイルス】「私たちにどう生きろと言うの?」小池都知事の「東京アラート」発令にクラブママ、キャバ嬢が恨み節

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「もう第2波の到来か?」
「全面解除が早すぎて、すっかり緩んだのでは!」

   新型コロナウイルス感染拡大の兆しがあるとして東京都の小池百合子知事は2020年6月2日、警戒を呼び掛ける「東京アラート」を発令した。前日の6月1日に休業要請解除を次の段階に進める「ステップ2」に移行した矢先の、突然の足踏みに不安が広がっている。

   そうしたなか、小池都知事が「より一層の外出、特に夜の街へのお出かけは控えていただきたい」と、名指しで接待を伴う飲食店を批判したことで、「夜の街」で働く人々から「私たちに死ねというの?」と怒りの声が起こっている。主要メディアの報道とネットの声から読み解くと――。

  • 小池知事から名指しで批判された歌舞伎町
    小池知事から名指しで批判された歌舞伎町
  • 小池知事から名指しで批判された歌舞伎町

大阪、神奈川では接待飲食店がとっくに営業再開

   「アラート」(alert)とは、英語で「警報」の意味。「東京アラート」は横文字大好きの小池都知事が提唱した、都民に「感染が拡大しているから気を付けて!」と注意喚起するシグナルだ。

   6月2日に、19日ぶりに30人を超える34人の感染者が確認されたことで、「再び市中感染拡大の恐れがでてきた」と発令に踏み切った。ただし、政府が発動する「緊急事態宣言」のような強力な影響力はなく、ステップ2の休業要請の解除もそのまま続ける。つまり、天気予報でいう「大雨洪水警報」のようなもので、行政の「避難勧告」にも値しない。

   小池知事は2日の対策会議で、「出勤にあたっては、引き続きテレワークや時差通勤の活用をお願いする」とも呼びかけた。東京アラートが解除されない限り、「ステップ3」の業種であるカラオケ店やパチンコ店などの休業要請解除の第3段階には移行しないという。

   朝日新聞(6月3日付)「東京アラート 緩和翌日一転警戒」が、こう伝えている。

「6月2日までの1週間の感染者114人のうち3割の32人が接待を伴う飲食店従業員など『夜の街』に関係する。このうち約4割が新宿区(の歌舞伎町エリア)での感染とみられるという」

   東京都からの「歌舞伎町エリア」と名指しされた新宿区の吉住健一区長も急きょ記者会見を開く羽目になった。同紙によれば、こう語っていた。

「(接待を伴う」飲食店に勤めている人の感染が周囲にわかると、店の利用に影響が出るとの恐れから、本人やその雇い主から協力をしてもらえない状況がある」

と、厳しい現状を明かしたのだった。

   東京都内の接待を伴う飲食店や風俗店が、都の休業要請に従わずに営業を続けるところが非常に多いことには理由がある。東京都のロードマップ「休業要請緩和のステップ」によれば、ステップ0からステップ3まであるが、ナイトクラブやキャバレー、接待を伴う飲食店などはロードマップから対象外になっている。

   それらの店は、どのような感染状況になれば営業が再開できるのか、まったく示されていない。ヌードスタジオ、ストリップ劇場、パチンコ店、マージャン店もステップ3なのに、完全にコロナが終息しないかぎり、今のところ営業できない状態なのだ。

お客の情報も提供するガイドラインを作ったのに......

   ちなみに、大阪府では6月1日に接待を伴う飲食店も含め、すべての業種の休業要請を解除した。大阪府のホームページをみると、接待を伴う飲食店向けには、次の「感染予防のガイドライン」を守るよう求めたのだ。

(1)テーブルの間を透明なパーティションで区切るか、距離を最低1メートル空ける。
(2)横並びで座れるよう席の配置を工夫し、横並びが難しい場合は真正面を避けるか、テーブルの上にアクリル板などを設置する。
(3)接客の際に身体的な接触を避ける。
(4)客どうしのお酌やグラスなどの回し飲みは避けるよう注意喚起する。
(5)大声の会話が行われないようBGMや効果音を最小限に調整する。

などを求めている。

   首都4都県のホームページを見ると、神奈川県が5月27日に大阪府と同様にあらゆる業種を一斉に緩和したが、千葉県と埼玉県が東京都と同様に、接待を伴う飲食店などの休業要請を続けている。

   こうしたなか、高級クラブやホストクラブなどでつくる社団法人・日本水商売協会が5月7日、「接待飲食店におけるコロナウイルス対策ガイドライン」をつくり、ホームページ上に公開した=写真参照

日本水商売協会がつくった「感染防止ガイドライン」(協会ホームページより)
日本水商売協会がつくった「感染防止ガイドライン」(協会ホームページより)

   それによると、接客するスタッフ(ホステス・ホスト・キャスト・マど)が必ずやるべきことして、次の項目をあげている。

(1)マスク着用。飲み物を飲む時以外は外さない。
(2)検温による入店規制(体温計は非接触型が好ましいが、接触型の場合、人ごとにアルコール消毒)。
(3)ソーシャルディスタンス(キャストとお客様のペアごとに1卓分あけて着席)。
(4)定期的な換気(サーキュレーターの使用と定期的な窓開け)。
(5)30分に一度のこまめな手洗いと、30分に一度のうがい。スマホ画面の定期的な消毒。
(6)入店時に体調確認シート(別紙)へのサイン(虚偽申告にはペナルティ)。
(7)顔や髪を触らない(ヘアセットの場合にはアップヘアが望ましい)。帰宅後は速やかな入浴。
(8)保健所からの情報開示請求には、最大限応じる。
などだ。大阪府の感染予防ガイドラインよりかなり厳しいが、これを持って東京都に開業要請をしたが、なしのつぶてだったという。

「いつかマスクを外した顔をお客さんに見せたい」

   数日後、水商売協会のメンバーは怒りの記者会見を開いた。5月24日付の東京新聞は、「水商売協会 クラブのママら窮状訴え『生きていけない、休業いつまで』」の見出しで、こう伝える。

「『じゃあ私たち、一体どうやって生きていけばいいんですか?』。クラブのママやキャバクラ嬢らがマスク越しに声を上げた。日本水商売協会が都内で会見を開いた。『バブルがはじけた時もリーマン・ショック時も、何とかくぐり抜けてきた。でも今回は苦しくて仕方がない』銀座で4店舗を経営するママ、望月明美さんが窮状を訴えた。百人の女性を抱え、シングルマザーも多い。LINEで励まし合う日々だが、読んだことを示す『既読』が付かない女性が日に日に増える」

   水商売協会代表の甲賀香織さんは、

「家賃が払えず東京を去ったり、経済的な苦しさから、性風俗で働き始めたりする女性が出てきている。営業が再開できた時には店が半分ほどに減っているおそれもある」

と訴えた。

   日本感染症学会の医師の監修で、独自にガイドラインを作成。保健所から要請があれば情報を提供するなど、客のプライバシー保護を優先してきた業界にとって画期的な内容になった。だが、ガイドラインを評価したのは千葉県だけで、東京都は1か月以上返答がなかった。

「名古屋市で13年間キャバクラ嬢をしてきた小川えりさんは、『キャバ嬢もマスクして接客してあたり前って感じに変わらないといけない。業界が変わるチャンスだと思う』と真剣な表情だった」

   また、キャバクラ店を経営する愛沢えみりさんは「営業中にマスクを外すわけにはいきません。いつかマスクを外して『こういう感じの女性だったのか』という日が来るのを楽しみにしてもらいたいです」と話していた。

   ただ、こうした水商売協会の代表たちは休業要請を守っている立場だ。守っていない業者が多いのが現状だ。今回の「東京アラート」に関する水商売業界の動きに関して、ネット上では冷ややかな声が多い。

「新宿の接待の店で20代の連中が9人もクラスター発生させているのが分かった。休業要請にも関わらず営業していたということだ。こうした店には見せしめも必要だ。営業許可証取り上げるべきだと思う」
「クラスターの原因がある程度わかっている以上、そこに強い対応を取ってほしい。店名公表とか感染者を出したということで、食中毒の時のような保健所の立ち入り検査とか、強い措置が取れないのだろうか」

   しかし、こんな擁護の声もある。

「店側が営業するのは自由はずだ。問題はそこにいく客だ。客側はよく行くよな。リスクとリターンが全然釣り合わない」
「前と同じで東京でダメならススキノや中洲、大阪とか夜の仕事をしている人たちは他の地方にまた流れて感染を増やす可能性ある。東京だけ押さえ込んでも意味がないよ。夜の接客業を休業にするなら一斉に全国でやらないと効果がないと思う」
「勝手に営業を再開しているパチンコ店と同じだ。休業してほしい店がギリギリに追い込まれて営業している。店名公表だけでは防ぎきれない。国を始めとした行政の対応が不十分ということだろう」

   そして、こんな指摘も。

「接待の飲食店がやり玉にあがっていますが...。誰も言わないけど、(感染経路不明の)人に言えない店って出会いカフェだと思うんだよな。自粛中もずうっと営業していたし、援助交際にもつながり、強烈に濃厚接触だもの」
「出会い系とか、あとは不倫とか。絶対に言い出せないだろうなあ。けどずるいよね。それくらいの覚悟持ってそういうことしろよって思う」

「『東京大警報』のほうがいい。ゴジラが来そうで怖い」

「東京アラート」を宣言した小池百合子都知事
「東京アラート」を宣言した小池百合子都知事

   ところで、小池都知事が発令した「東京アラート」。まず、ネーミングに違和感を持つ人が多かった。

「アラートの意味が、お年寄りには通じない。緊迫感が伝わりません。うちの父親は『アラームか?』と言っておりました。大阪では『警戒信号』と言っているから、そっちのほうが断然わかりやすい」
「『東京大警報』がいいですね。ゴジラが出てきそうな怖さがあってわかりやすいです」

   また、第2波が来たのではないかと、心配する声が多かった。

「結果論ですが、やはり緊急事態宣言解除からのステップ1、ステップ2までの移行期間が短すぎました。たしかに経済を回さないと日本経済が死んでしまいますが、第2波を招いては元も子もない。そして、東京アラートといってもこれまで通り強制力がなく、ステップ2に関しても変更なしとなれば、単なるの都知事のパフォーマンスに過ぎないと思います」
「まだまだ市中感染者が多数いるということだね。これがまた3ケタに戻るとかなると、とても心配だ。ニュースを見ていても、街に人が溢れていて気が緩みすぎだ。緊急事態宣言時みたいに自制を続けるべきだと思うし、それができないなら安易に解除すべきでなかった。解除⇒感染者増でアラート発動⇒緊急事態宣言再発動。この繰り返しになりそう」

   しかし、それ以上に多かったのは、「多少の感染者増は仕方ない。これがコロナとの共存だ」を前向きに受け止める声だった。

「その繰り返しでオッケーだよ。ワクチンができるまで、それ以外に道はない。騙し騙しおっかなビックリ行くしかない。皆がウイルスを忘れず、いつでも、どこでも、誰にでも感染するリスクがあることを意識して、行動するしかないと思う」
「皆で頑張って自粛して感染を最小限に抑えて時間を稼いだのだから、これからは皆で頑張って経済を回す方向に向かないと、コロナ以上の悪影響が出てくるよ」
「すべての業界が限界だったから再開したまで。コロナの制圧は無理なんだから、これからはコロナと共存していくということです。これが現実なので、現実を受け入れて生きていきましょう」

(福田和郎)

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