靴の脱ぎ方一つでわかる「育ち」
本書が人気を呼んだのは、婚活などで参考になるからというばかりではなく、タイトルの印象とは違って、「マナーをきちんと知ることで、『育ち』を変えられる」ということがメッセージにあるから。
たとえば、訪問時に靴を脱いで中に上がる際の、その靴の脱ぎ方で「育ち」がわかってしまうと指摘。「多くの人は正しい脱ぎ方を知らず、無意識に間違った脱ぎ方をしている」という。それが、上がる前にくるっと後ろを向き、脱ぎながら靴をそろえ上がってしまうやり方だ。
礼をわきまえた作法は、建物の内部を向いたまま上がり、上がったら体の向きを変えてひざを折り、靴の向きを変えてわきによせる。本書では、こうしたふだんの暮らしの中で「育ち」が表れるポイントを250の例で紹介し、その正解を解説している。
新型コロナウイルスの感染対策をめぐって日本は当初、海外からの批判にさらされたが、緊急事態宣言の期間を経たのちは、感染死亡率が外国に比べて極めて低いことから、今度はその「成功」が注目の的となった。
海外のメディアはその要因として、日本人の規範意識や衛生意識の高さのほか、他人を思いやる気持ちが強い文化、つまり、マナーを重視する国民性を挙げている。その伝(つて)でいくと、本書はアフターコロナでの「成功」に資する一冊といえそうだ。
「『育ちがいい人』だけが知っていること」
諏内えみ著
ダイヤモンド社
税別1260円