新型コロナウイルスの感染拡大で止まっていた世界経済が、ようやく動き出したとはいえ、第2波への警戒感はぬぐえない。
雇用情勢が大幅に悪化している米国は、早期の景気回復の期待が後退しつつあるうえ、中国とは新型コロナウイルスの発生源をめぐる対立に加えて、香港に対する「一国二制度」の崩壊への警戒感を強めている。米中対立の激化で、ドル売り圧力は強まるのか――。どうなる? 今週の株式・為替マーケット!
東京株式市場 強い材料がなく上値圏でもみ合い
日経平均株価予想レンジ:2万1500円~2万2500円
2020年5月29日(金)終値 2万1877円8916銭
今週の東京株式市場の日経平均株価は、上値圏でのもみ合いか。
前週の日経平均株価は、大幅続伸となった。政府が全国の新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言を解除したこと、今年度の第2次補正予算を閣議決定したことなどを好感した。日経平均株価は一時2万2000円をうかがう動きとなり、月間では2か月連続の上昇となった。
今週の日経平均株価は、上値圏でのもみ合いとなりそうだ。新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言の解除、第2次補正予算という大きなイベントを通過し、上値追いをできるだけの強い材料がない状態。経済活動再開による期待感は強いものの、一方では新型コロナウイルスの感染拡大の第2波に対する警戒感も強い。
国際関係で「香港国家安定法」とWHO(世界保健機関)をめぐる米中の対立が激化していることも、相場の上値を抑える材料となりそうだ。
東京外国為替市場 米雇用情勢、歴史的悪化
ドル・円予想レンジ:1ドル=107円00銭~108円50銭
2020年5月29日(金)終値 1ドル=107円77銭
今週の外国為替市場でドル円相場は、ドルの上値は重い展開か。
前週のドル円相場は、ドルが強含みで推移した。日本の新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言の解除と第2次補正予算の決定が、リスク選好のドル買いに結び付いた。ドルは一時1ドル=108円近くまで上昇した。
今週のドル円相場は、ドルの上値が重い展開となりそうだ。世界的な経済活動の再開に対する期待感は強いものの、米国の雇用情勢は歴史的な悪化となるなど、実態面での問題は多い。
加えて、中国が全人代で香港に対する「国家安全法」の導入を採択したことで、米国は香港に対する一国二制度の崩壊に警戒を強めている。さらに、新型コロナウイルスの発生源をめぐって、WHOを舞台に米中の対立は激化しており、ドルの上値は重くなりそうだ。
経済指標は、国内では1日に1~3月期法人企業統計、5日に4月の家計調査と景気動向指数などが予定されている。
海外では、1日に5月の米ISM製造業景況指数、3日に5月の米ADP雇用統計と米ISM非製造業景況指数、4日に4月の米貿易収支、ECB(欧州中央銀行)定例理事会、ラガルドECB総裁会見、5日には5月の米雇用統計などが予定されている。
なお、7日には5月の中国貿易収支の発表が予定されている。
(鷲尾香一)