異様な高値が続く日経平均株価の末路は?
さて、コロナ禍の最中にもかかわらず、ここ数日、株式市場が異様な高値で推移している。2020年5月28日現在、日経平均株価は4日続伸して2万1900円台で引けた。約3か月ぶりの高値だ。株式市場は今後どうなるのか――。
「全面解除の期待から上昇を続けているが、期待一巡後は上値の重い展開になる」とみるのは、三井住友DSアセットマネジメントのシニアストラテジスト市川雅浩氏だ。「市川レポート:2万1000円台を回復した日経平均株価の今後」によると、こうだ。
「緊急事態宣言の全面解除を受け経済活動再開への期待から日経平均は2万1000円台を回復したが、航空や鉄道など出遅れ銘柄の上昇が目立ち、業績底打ちのシナリオの織り込みが進んだ可能性がある。ただコロナの影響は長期化の可能性が高く、期待一巡後の日経平均は上値の重い展開が見込まれるだろう」
最近の動きには、国内経済活動再開への期待があると同時に、欧米諸国の主要株価指数が総じて堅調に推移していることも、日本株の買い安心感につながっている。また、事業規模が100兆円を上回る第2次補正予算案への期待も大きい。今後は、どう推移するのか。市川氏は数式を使って試算した。
「次に意識される水準は2万1650円近辺だが、今後の日経平均株価の動きについて、上値の重い展開を予想するという。コロナの影響は長期化する可能性が高く、日本を含め、多くの国で景気回復のペースは緩慢なものになる。市場の期待はほどなく一巡し、感染拡大の第2波や、香港を巡る米中対立などの動きに関心が移っていく」としている。
「日本株が下落前の水準に戻るのは3年かかる」と指摘するのは、ニッセイ基礎研究所の准主任研究員前山裕亮氏だ。
「日本株、下落前の水準に戻るのに3年以上かかる可能性」(5月27日付) というリポートの中で、前山氏は先行きが見えないコロナ禍の状況にあって、「BPS」という指標に注目して難解な数式、グラフを使って長期的な株式相場の動きを予想したのだった。
BPS(Book Value Per Share)とは、一株当たり純資産のことで、財務分析では企業の成長性を分析する指標の一つだ。1株に対して会社の純資産がいくらあるかを表している。
前山氏は、こう述べている。
「(コロナ禍では)企業業績に対する不透明感が高く、先行きを見通すのが難しい。そのような環境の中では、BPS が株価、特に中長期的な株価の動向を考えるうえで参考になる。BPS は通常、一株あたりの得た純利益(EPS)のうち配当として投資家に還元されなかった分が内部留保され、成長していく」
前山氏は、2014年3月期から2020年3月期までの足元7年間のTOPIXの動きと、BPSと内部留保の割合に一定の「法則」があることを見出したのだった=図表4参照。
その結果、
「やはり、急落前の水準に戻るには3年以上の時間がかかるのではないか。『半値戻しは全値戻し』という相場格言がある。企業が収益を上げ続けていれば、いつかは必ず株価は急落前の水準に戻ると思われる。ただ、そのスピードは考えている以上に緩慢で、時間がかかる可能性がある。日本株式の先行きに対してあまり楽観視せず、気長に長期投資を心がけた方が賢明なのではないだろうか」
と結論付けたのだった。
(福田和郎)