迫る! 英国とEU、移行延長の合意期限は6月30日
客観的に言って、2020年12月までにFTAを締結し、スムーズに離脱を実現することは不可能に見えます。移行期限を延長すべきでしょう。その場合、2020年6月30日までに英国とEUの双方が延長について合意すれば、2年以内で1度限り延長することが可能です。
しかし、ジョンソン政権は移行期限延長を拒否しています。移行期限の延長合意を禁じる法案まで通しています。ジョンソン首相の「性格」から言っても、延長しないでしょう。そうなると、忘れ去られていた「合意なき離脱」リスクが亡霊のように蘇ってきます。
2020年6月30日は、あと1か月半ほどですが、ジョンソン政権が延長を受け入れることはないので、俄然「合意なき離脱」リスクが高まります。
個人的には、対ユーロでポンドは0.90を超えるレベルに売られることになると思います。
7月以降も、問題は続くでしょう。新型コロナウィルス対策が一服し、次第に一般社会の状況は落ち着くでしょうが、「合意なき離脱」リスクが再認識され、マーケットは凍りつくでしょう。ユーロポンドが0.90を超えて、事の次第によっては0.95を示現する可能性もあると思われます。
では、2020年12月にハードブレグジットを迎えるのでしょうか?
それは、その時の状況にならないとわかりませんが、可能性はあるでしょう。その場合は、英ポンドがかなり売られます。
しかし、相手はジョンソン首相です。不可能と思われた離脱協定案をEU側に変更させ、合意を実現した人です。EU側もジョンソン首相に対して好意的です。可能性は少し低いですが、FTAの最低限合意しなければならないところに合意し(財の取引は税率ゼロにするなど......)、残った部分を2021年以降の課題ということにして先送りできれば、なんとか間に合うかもしれません。
その場合、ユーロポンドは0.80以下に急転直下となりそうです。(志摩力男)