日本経済新聞「ふくらし粉でふくらませた演出だ」
そう指摘するのは、日本経済新聞「2次補正透ける規模優先 事業規模117兆円 政府支出は33兆円」である。
「2次補正のうち『真水』は国費などとして計上された33兆円程度だ。事業規模は財政支出が呼び水となった動く民間資金を含めた額。規模を大きく見せる演出に使われやすい」
と一刀両断。そして、問題は別のところにあるという。
「問題はこうした『額面ありき』で積み上げた予算に実務が伴っていないことだ。『ノウハウを持った人材がまったく足りていない』。政府が2次補正の目玉として用意した企業向け(無担保・無保証の)資本注入枠。劣後ローン(編集部注:政府系金融機関からの一部借り入れを資本とみなせるローン)も含めて12兆円の予算額が伝わると、現場を担う政府系金融機関から悲鳴があがった」
「無担保・無保証で融資する」というと聞こえはいいが、無担保・無保証の資本性ローンは、リスク管理手法が普通の融資とは異なり、かなり危険で取り扱いが難しい。政府は夏までに体制を整える計画だが、企業の資金調達が銀行融資に偏る日本には、そもそも無担保・無保証ローンを扱える人材が非常に少ないのだ。
朝日新聞「政府2次補正予算案決定 対コロナ読み違え後手」も、大急ぎでまとめた「打ち出の小づち」の巨額予算だと批判する。
「与党内では『コロナでこけたら選挙に勝てない』と焦りの声も上がった。不満に押される形で、与党と関係団体との調整では額が積み上がり、与党議員からは『ごねれば出る打ち出の小づちみたいだ』との声ももれた。野党から『知恵もなく、ただ積んだだけ』との批判もあがる。
ある自民党議員は2次補正の中身について『困っている人たちの補償ばかりで、本来は1次でやっておく話だ』と失敗を認める。2次補正予算案が成立し、執行されるのは6月中旬以降になる。大急ぎでまとめただけに、執行が滞る懸念も残っている」
そうでなくても、1次補正で決まったさまざまな対策、たとえば「国民1人あたり現金10万円給付」「アベノマスク」「雇用調整助成金」などの事務手続きが、まだ大混乱のさなかで、国民に行き渡っていないのだ。
産経新聞「届かぬ資金 中小不安 2次補正、追加対策柔軟運用求める声」は1次補正で打ち出された支援策が、まだ困窮している中小企業にまったく届いていない実態を報告している。
「観光施設の予約サイトを手がけるベンチャー企業の経営者は今月(5月)、日本金融公庫の追加の借り入れを相談したところ、条件を突きつけられて断られた。経営者は結局、ベンチャー企業に投資するベンチャーキャピタルに追加出資を求め、資金繰りに走っている。民間の調査機関によると、(資金繰りに困っている)創業初期のベンチャーのうち56%が『要件に当てはまらない』ことを理由に、政府や自治体の支援策の申請を断念した」
朝日新聞「1次分の不満を穴埋め 遅い給付いまだ届かず」も、1次補正の対策がまったく届いていない現状を報告している、
「働き手を守る雇用調整助成金も手続きが大変だ。相談件数は38万件を超えるのに申請は5万1000件、支給決定は2万7000件(5月26日現在)。厚労省はオンライン申請も始めたが、1時間でシステムトラブルがわかり受け付けを停止した。
個人事業者向けの持続化給付金もスムーズではない。経産省では申請から2週間で支払えるとしていたが、(1か月後の今も)多数の企業が手続きを待つ。札幌市の保険代理業者は、コールセンターに100回以上電話したがつながらなかったといい、『給付のめどすらわからず本当に困っている』という」