新型コロナウイルスの感染拡大による緊急時代宣言が、約50日ぶりにようやく全国的に解除の運びとなりました。
ご承知のように、まだまだ感染の第2波、第3波が起きる可能性も高いとされる以上、今回の宣言解除はビフォーコロナへの回帰ではありません。今後は生活、勤務、ビジネスすべてにおいて、コロナウイルスとの共存を大前提としたウィズコロナ対応が必須の課題になるわけです。
さらに、このウィズコロナ期の先にあるワクチンの完成以降と定義されるアフターコロナ期もまた、長期間のウィズコロナ期を経由することにより、社会情勢が大きく変化することになり、ビフォーコロナ期への回帰はあり得ないだろうと言われています。
「ニューノーマル」と呼ばれる新たな常識への対応
見えてきた「ビフォーコロナ期 → ウィズコロナ期 → アフターコロナ期」の流れで、多くの業態は旧来のビジネスモデルの変更を余儀なくされつつあります。たとえば外食産業では、隣の席との間隔の拡大や大人数での個室宴会回避などが求められ、それにより減少するであろう売り上げをテイクアウト強化などの施策で埋め合わせるなどの対応に迫られています。
小売業では、長期化が予想されるインバウンドの激減と在宅中心の巣ごもり生活によるライフスタイルの変化から来店客の減少は避けられず、リアル店舗に頼り切らないネットや通販併売比率の引き上げなど、早期に新たなビジネスモデルへの移行が求められていると言えるでしょう。
これらニューノーマルと呼ばれる、新たな時代の新たな常識への対応が、今、急がれているのです。
このように、すでにスタートが切られたウィズコロナ期ですが、この期間はいつまで続くのでしょう。一般的には、新型コロナワクチンの完成を一つの区切りとしたアフターコロナ期入りまでは、1年半~2年を要するのではないかと言われています。
企業経営にとって2年といえば十分に長い時間であり、企業マネジメントにもウィズコロナを前提とした中期的戦略策定など、さまざまな変革が求められることになるでしょう。すなわち、企業経営においてもコロナとの共生によって生まれるニューノーマルを正しく理解し、いち早くそれを踏まえた長期的な視点で、ニューノーマルを経営に取り込んでいくことが、今後の成長には欠かせないのです。
ビジネスの成否を分ける大きなポイント
企業マネジメントにおいてニューノーマルになりうる課題ですが、まずはテレワークの急激な浸透に代表されるデジタル化でしょう。すなわち、企業経営のあらゆる場面でデジタル化を試すという姿勢をもって取り組むことが、成否を分ける大きなポイントになると思われます。
結局のところ、これまでのビジネスでは、ごく当たり前であった人と人との接点というものを、極力減らすことがヨシとされる流れに変わったわけなのですから。すでにこの3か月ほどで、さまざまなビジネスシーンのオンライン化、デジタル認証化などの導入検討は目覚しい勢いで進んでおり、ビジネスにおけるデジタル化の利便性への理解が古い常識を打ち壊し、リアルとバーチャルの融合はニューノーマルになりつつあるのです。
現実に私の周囲では、社内会議は当然のこと、商談の大半がオンラインで行なわれる企業も珍しくなく、なかにはこれまで契約してきた広い事務所は不要と考えてオンライン併用を前提とした小ぶりな事務所への移転を決めた企業も出てきています。
同時にビジネスのデジタル化で忘れてはならないのが、キャッシュレス化の流れです。これまで当たり前のように行なわれてきた現金のやり取りは、ウィズコロナ期では早期のデジタル移行が好ましい、という流れになるでしょう。
自社のビジネスモデルにおいて現金を扱う部分があるのであれば、そこはまっ先にデジタル化を検討する必要があるでしょう。
自社の価値や存在意義を見直す「原点回帰」のチャンス
もう一つ、経営者が理解して対応すべきニューノーマルは、ワークシェアという考え方です。少子化の問題が叫ばれる中で、女性活躍やシルバー活用などが徐々に実行されてきましたが、一方でワークシェアこそがこの問題解決のカギを握る存在であると言われてきました。
正社員の時間拘束労働が原則の我が国において、これは遅々として進まなかったのですが、今般突然のテレワークの進展により、労働管理に時間から成果への移行を促すことで、労働力の企業間シェアが一気に進む可能性が出てきました。すでにIT系企業ではワークシェアが動き出していて、この流れは業界問わずニューノーマルになっていく可能性が高いのです。
ニューノーマルへの調和と同時に企業経営者として意識していただきたいのは、予期せぬタイミングで訪れたこの世界的規模の大変革の中で、このタイミングを自社の価値や存在意義を、今一度見直す原点回帰のチャンスでもあるとして捉え直すという考えです。
変革の時こそニューノーマルへの対応を前提として、自社で何が新たにできるのか、ゼロベースで考えてみることが有効になってもくるのです。
同時に、原点回帰による経営理念、経営ビジョンの見直しは魅力のある経営の再構築につながり、これから起きるであろう成果主義への移行による優秀人材の企業間での奪い合いに対しても、確実にプラスに働くことでしょう。
いずれにしましても、今回のコロナショックはビジネス界に世界規模で変革を及ぼすものであり、このような時に古い服を着たままでは置いてきぼりになってしまうのは間違いありません。何を脱ぎ捨て、何を着替え、また何を新たに身に纏うのかを、今こそしっかりと見極める必要があるということを肝に銘じつつ、誰もが未体験のウィズコロナ期を前に向かって突き進む必要があるのではないでしょうか。(大関暁夫)