現代は先行きを見通すことが難しい時代だ。新型コロナウイルスの感染拡大もその表れの一つだが、それまでにも予期せぬ大きな出来事が多くの中小企業が翻弄してきた。
もちろん、コロナ禍からのサバイバルのあとも、何が起こるかわからない。企業は不測の事態にも揺るがない体質を備えることが重要だ。欠かせないのは人材戦略、人材育成。本書「勝手に人が育っていく!社員100人までの会社の社長のすごい仕掛け」は、人材面で「社内勉強会」の持つ、知られざる効果を説き、その実践を勧めている。
「勝手に人が育っていく!社員100人までの会社の社長のすごい仕掛け」(渡邉良文著)かんき出版
先行きの見通しが難しい時代だからこそ......
さかのぼってみれば、東日本大震災、リーマン・ショック、バブル経済の崩壊など、現代には社会や産業、経済に大きな影響を及ぼした数々の出来事に見舞われている。
本書は、こう主張する。
「先の見通しが難しい時代だからこそ、これからの企業成長モデルはスリムで筋肉質な『人を増やさずして規模を拡大する』方向へとシフトしなくてはなりません。ことさら中小企業においては、少数精鋭型で経営を維持することが重要になると考えられます」
社会では少子高齢化が進行中。2019年9月の時点ですでに総人口の28.4%、4人に1人以上が高齢者という状況だ。「こうした状況を鑑みれば、なおされ少数精鋭型に向けた人材戦略・人材育成への取り組みが欠かせないでしょう」
著者の渡邉良文さんは、富士通を経て人材育成業界に転身し、数社の研修会社で講師、コンサルタントを務めた。2007年には大手電機メーカーの新入社員1200人の研修を総合プロデュースするなどして研修における独自のノウハウを蓄積。2010年5月、人材教育コンサルティング会社を設立、代表取締役に就いた。
「社内勉強会」を人材育成の場に
少子化の時代の人材戦略の主眼が、採用から育成へ向かうのは自然な流れだ。今いる人材をどうやって最高の戦力に変えていくか――。著者がその経験から、最適と考えるのが「社内勉強会」だ。
「社内勉強会? 成果が期待できるのか?」。社内勉強会を提案すれば、少なからずこうした反応があるそうだが、そうした反応になるのは、きちんとした社内勉強会の構築ができていないからだという。
学校の発表会のように、誰かを「講師」に仕立てた集会を開けばいいというものではない。「有意義な社内勉強会を定着させるためには、それなりのノウハウ・テクニックが必要」といい、本書では、それが詳しく紹介されている。
本書では、社内勉強会を成長のベースにした、電子書籍アプリ・ソリューション開発会社、インターネットの各種情報サービス事業を行う会社など、実際の例を詳しく紹介。勉強会の存在が、採用での会社の強みにもなっているという。
こうした実例を受けて、「勉強会がなぜ最強の人材の育成の場になるのか」を解説し、勉強会チームの編成の仕方、勉強会の進行役である「ファシリテーター」の役割・振る舞いになどについて述べる。
編成やファシリテーターを最初は社長が務めて軌道に乗せることが重要。本書の後半にはそのための手順・方法が詳しく盛り込まれている。
「社内勉強会が回り出せば、社員の能力、生産性、モチベーション、定着率は確実にアップする」という。
「勝手に人が育っていく!社員100人までの会社の社長のすごい仕掛け」
渡邉良文著
かんき出版
税別1500円