官民の「Win-Winの関係」は可能なのか
――第2期の「生涯活躍のまち」で目指している官民連携のプラットフォームづくりは、どのようなイメージなのでしょう。
中野孝浩参事官「プラットフォームというのは連携の『場』です。たとえば、ある「生涯活躍のまち」の事例では、多くの空き家があるという課題、地元特産のかぼちゃ農家や地場産業の伝統工芸の職人が後継者不足に悩んでいるという課題。これらの解決のために、課題をプラットフォームに載せることで、ある企業がその課題を知り、支援していくという流れができます。そういった『つなぎ』、触媒役がプラットフォームの役割です。
ここで重要なことは、一律の課題ではなく、地域ごとに違った課題を企業や個人に見えるようにすることです。地元団体の情報と民間の付加価値のある情報を掛け合わせて、初めて生きた情報になる。その情報を、あらゆる方々にいろいろなカタチで発信してもらうことが重要で、プラットフォームがそのきっかけになります」
――一般に、地方は排他的といわれたり、また地方創生事業では利害関係がぶつかったりすることがあると思うのですが、調整役となる地方公共団体は大変ではないでしょうか。
中野参事官「どの企業も慈善事業ではなく、商売として成立させなければなりません。最近は株主への説明も強く求められているなか、少なくとも事業継続が可能な水準のメリットが求められるので、社会貢献だ、地域貢献だと、そう簡単には割り切ることはできません。ここが官民連携のジレンマで、企業は本業との折り合いをつけながら、地域とのWin-Winの関係につくることを模索します。どこでも直面する大きな課題で、なかなか難しい問題ですが、こうした地域貢献活動による企業の信頼向上や宣伝効果、地方マーケットの開拓、社員のモチベーション向上など、幅広い企業サイドのメリットも期待できるではないでしょうか。
官民連携、企業の協力は生涯活躍のまちづくりにとって非常に重要です。『生涯活躍のまち』では、まずは人と情報を、都市部と地方が共有することを目指しています。目指しているプラットフォームに地域の情報を載せると、いろいろな人がいろいろなカタチで関わって問題解決を図ることができる半面、利害関係がぶつかると、それをコントロールする人が必要になります。そこは地方公共団体と中核的な法人がコーディネーター役を担って、舞台をうまく回していくしかありません。つまり、重要なのは『人材』です。
じつは第2期総合戦略にも位置付けていますが、そんなコーディネーターやプロデューサー人材を養成する研修事業に取り組みます。都市部のみならず、地方にも優秀な人材がそろっています。そういった方々に、やる気を出してもらうきっかけをつくりたいと考えています。
意外かもしれませんが、20代、30代の若い世代で、『思い切って地方で挑戦したい』という人は多くいます。人材は都市部からの『関係人口』が増えていけば、いろいろな企業に勤める優秀な人材が流入してきて、それをきっかけに地方との交流は活発化し、将来的には人材不足を補えるようになるかもしれません。地域の課題解決に高い関心を持つ若い方が『生涯活躍のまち』の中間支援組織やプラットフォームなどの場を通じて課題解決を働きかけ、それがさらに広がっていくと人の流れがますます活発になります。コミュニティへの人の流れをつくることが、課題の一つです」
――現在、新型コロナウイルスの感染拡大で、都市部と地方の行き来が思うようにできません。
中野参事官「確かに、新型コロナの影響で人の移動や交流に支障が出ています。しかし、一方では最近注目されてきたオンラインによるコミュニケーションツールの活用が急速に広がっています。こうしたICT(情報通信技術)なども活用しながら、『離れていても可能な交流』を前に進めていきたいと思います」