空き家が続く街並みが一変! 注目の輪島市「ごちゃまぜのコミュニティ」
――地方公共団体の危機感は、かなり強いのでしょうか。
中野孝浩参事官「切羽詰まっている町村も多いと思います。隣接する市との合併を諦め、人口減少の一途でピーク時の半分。地場産業、ありません。そう言うと、深刻で手立てがないように思えますが、じつはそういった地方のほうがおもしろいアイデアを多く持っているのも事実です。本当に困った地域ほど、住民の力を合わせて本気で取り組まれることも多いんです。志の高い自治体は、自分たちの力で考え抜き、地域総動員で動いているわけです」
――先進的な事例について、具体的に教えてください。
中野参事官「その一つ、石川県輪島市は約2万6000人(2019年12月時点)の町ですが、中心市街地のはずなのに過疎化によって空き家だらけになり、夜は真っ暗になっていました。そこに温泉を掘り、人が集まれるような交流拠点を設けたのです。風呂というのは日本人の交流拠点として伝統があり、その周りに居酒屋のような交流スペースやフィットネスのような運動できる場所や、子育て世代の方々が集まれるような、厨房付きの料理ができる場所を、空き家を改修してつくりました。そうした巧みな『仕掛け』が成功し、いろいろな人が集まり、交流するようになった結果、すばらしい『ごちゃまぜのコミュニティ』が形成されました」
――「ごちゃまぜのコミュニティ」というのは、どのようなものなのでしょう。
中野参事官「たとえば、お年寄りはお年寄りだけ、若者は若者だけと分けて支援していくと、それぞれに分断されたコミュニティができてしまいます。しかし、たとえば温泉に入ると、みんな一緒になっていきます。伝統的なコミュニティというのは、みんなが交流しながら『ごちゃまぜ』になって、それぞれが役割を果たして、思いがけない力を発揮しています。
先の輪島市では、外国人や障害のある方を含め、ごちゃまぜで交流しています。いろいろな方々がちゃんと『居場所』と『役割』を持ってまざりあって、それぞれの役割を果たしているんです。コミュニティの中で、それぞれの持つ能力を活かして暮らすわけですから、そこでは人々が多様性を認めあって、じつは街全体でみるとすごい強みになっているのではないでしょうか。
366の地方公共団体が生涯活躍のまちの一定のコンセプトを守ったうえで、地域のニーズをどのようにカタチにするかを考え、工夫して、その土地の魅力や多様な地域資源を生かしていく。これが一律だとおもしろくありません。基本コンセプトである、『誰もが《居場所》と《役割》を持つコミュニティ』と、それを実現するための4つの要素を守っていただければ、あとはその地域の特性を生かして柔軟に個性を活かしたまちづくりを進めてもらえばいいと思います。逆にそうならないと、おかしいですよね。似た者同士でつながる分断ではなく、まざりあっての心地よさをうまく生かしていく。そこを狙っていきたいですね」
(後編につづく)