政府は2020年5月21日、新型コロナウイルス対策で東京都や大阪府など8都道府県に発令していた緊急事態宣言を、大阪府、兵庫県、京都府の関西3府県で解除した。
東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の首都圏4都県と北海道では継続する。宣言の期限となる5月末までに解除できるかを、25日に検討する方向だ。
ネット上では解除された関西3府県では、喜びと同時に一気に気が緩んで第2波がくるのではないかと心配する声も強い。また、取り残された関東では、足を引っ張った形の神奈川県知事に対する批判の声も。
解除か継続かをめぐり、知事たちのリーダーシップが問われる結果となった。ネットの声を拾うと――。
「足を引っ張って申し訳ない」と神奈川県の黒岩知事
政府は5月21日午前、感染症学者や経済学者でつくる基本的対処方針等諮問委員会に解除方針を諮った。妥当との判断が得られれば、同日午後に開かれる衆参両院の議院運営委員会にそれぞれ事前報告したうえで、政府対策本部で決定する。
主要各新聞の21日付朝刊の論調とネットの声を読み解くと――。
5月21日まで緊急事態宣言が発令されていたのは、北海道、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、京都府、兵庫県の8都道府県。政府が解除の目安の中で特に重視したのが「直近1週間の新規感染者数が10万人あたり0.5人程度以下」という基準だ。
これを8都道府県にあてはめると(直近1週間5月13日~19日)、神奈川県が突出して高くて0.99人、次いで北海道(0.74人)、東京都(0.60人)と続き、この3都道県が基準以上となる。
以下、大阪府(0.34人)、埼玉県(0.30人)、千葉県(0.22人)、兵庫県(0.13人)、京都府(0.08人)はみな基準以下だ。しかし、埼玉県と千葉県は東京都と一体の生活圏、経済圏とみなされ、解除の対象外をなった。関西の3府県はみな基準以下で、かつ同じ生活圏、経済圏なので同時に解除と決まったわけだ
ちなみにこの8都道府県の中で、神奈川県だけが前の週より新規感染者が増加しており、右肩上がりのカーブを示している。直近の5月20日の新規感染者も18人と全国2位の東京都(5人)より13人も多かった。だから、19日の首都圏4都県知事のテレビ会議で、神奈川県の黒岩祐治知事が、
「神奈川が皆さんの足を引っ張る形になっている。(それぞれの都県の)地元の経済界からは解除の要望があると思うが、考えをうかがいたい」
と謝罪すると、小池百合子都知事らから、
「私たちは一心同体です。一緒になって頑張っていきましょう」
と励まされたのだった。
コロナ対策では全国の知事の手腕が問われているが、産経新聞(5月21日付)「本紙全国都道府県知事アンケート 緊急事態宣言40知事『効果』」が、それぞれの知事の苦悩や自信を表していて興味深い。
各自治体が行っている感染防止策について聞くと、46人の知事が「効果があった」と自信を示したのに対し、神奈川県の黒岩知事だけがただ1人、
「新規患者が発生しており、現段階での評価が難しい」
と、自らの対策の「効果」を認めなかったのだ。
一方、政府が4月7日に全国に発令した緊急事態宣言について、46人の知事が「効果があった」と一定の評価を示したに対し、たった1人、異を唱えた知事がいた。大阪府の吉村洋文知事だ。
「延長の際には出口戦略も示すべきだ。どちらかといえば評価しない」
と突き放したのだった。