見えない誰かと闘ってきた?
ところが、35歳まで順調だったY香さんの人生に異変が生じます。すんなり行くはずと 思っていたのに、なかなか妊娠しないのです。
仕事を少しずつセーブし、飲み会とかの付き合いも控えるなど、いつ妊娠しても差し支 えないように、気をつけていたというY香さん。36歳になっても、まだ崖っぷち感はな く、おかしいなと思い始めたのは結婚して2年が過ぎた頃とのこと。毎夏、定期的に受診し ている会社の人間ドックの問診で、不妊症の可能性を指摘され、すぐに近くの婦人科に駆 け込んだとのことでした。
「私が不妊症?」――。Y香さんは、37歳の人生で初めてといってもいいほどの、現実 を突きつけられることになります。
「正直、ショックでした。夫は、『無理して不妊治療なんてしなくてもいいよ』と言っ てくれたのですが、私はどうしても子供が欲しかったので、私の意志で治療に踏み切りま した。でも、治療は想像を絶するほどの大変さでした。正直、今でも当時のことは思い出 すのがつらいです。
職場の理解もあって、仕事はなんとか辞めずに済みましたが、毎年のボーナスは全部不 妊治療の費用に出ていきましたし、身体的負担も相当なもので、あの期間は仕事している か自宅で寝ているか、という生活でした」
結局、Y香さんは7年間不妊治療を続けましたが、二度の流産も含めて出産に至った妊娠 は一度もないまま、44歳で不妊治療をやめました。治療にかけた費用は、総額で1000万円近 くまでのぼったそうです。