政府は2020年5月14日、新型コロナウイルス対策で全国に発令していた緊急事態宣言を39県で解除した。残るのは北海道、東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、兵庫、京都の8都道府県となった。
西村康稔経済再生担当大臣は衆議院の委員会で、
「政府としては5月31日までに収束させるべく全力で取り組む」
と述べたが、ネット上では、
「それならば急いで解除しないで5月31日まで頑張るべきだった」
という解除に反対の意見と、
「もう経済も限界だから、やむを得ない」
という賛成の意見が激突している。主要各新聞の5月14日付朝刊の論調とネットの声を読み解くと――。
まだ東京の感染者数は解除目安の2.5倍だが......
焦点は、東京、大阪など残る8都道府県がいつ解除されるのかに移っているが、政府が5月14日に示した主な解除の基準は次の3つだ。
(1)直近の1週間の新規感染者数が「10万人当たり0.5人程度以下」に抑えられているなど、クラスター(集団感染)が起こっても対策が十分にできる水準になっていること。
この数値は人口1400万人の東京都の場合、1週間の合計で70人(1日10人)以下になることが目安になる。
ちなみに、5月14日現在の東京都の新規患者数は30人、13日は10人で、直近の1週間の合計は175人だから、目安の2.5倍だ。
(2)各自治体の医療提供体制が、病院のベッドに空きがあるなど、重症者が増えても十分に対応できること。
(3)感染拡大を監視する体制では、PCR検査などで感染拡大の傾向を早期に察知し、ただちに対応できること。
この中では、(1)が具体的な数値を示していて、わかりやすいが、日本経済新聞「解除目安『10万人に週0.5人』8都道府県で未達」によると、そう簡単ではない。東京都はもちろん、北海道、埼玉県、神奈川県、石川県、京都府、大阪府の8都道府県で達成できていないからだ。
ところが、今回解除が見送られた千葉県と兵庫県は目安を達成している。両県の知事とも「なぜうちが解除されない?」と不満の声を漏らしたが、千葉県は東京都と、兵庫県は大阪府に隣接しており、「一体」とみなされたのだった。
いずれにしろ、政府は5月21日に改めて専門家の諮問会議を開き、意見を聞いたうえで残りの8道府県の解除について可否の判断を下す。今後の焦点は経済の中心地、東京と大阪の解除がいつになるかだが、フジテレビ「焦点は東京・大阪の解除 首相 今夜会見『出口』説明」(オンライン版5月14日付)は、東京と大阪の早期解除の可能性があることを示唆している。
「今後の焦点は、東京や大阪など、大都市を抱える地域をいつ解除できるのか。政府高官は、『5月21日には、東京を含むすべての地域で宣言を解除できるかもしれない』との見通しを示している。ただ、政府内には、連休明け以降の外出が増えたことで、感染者が増加するとの懸念があり、『5月31日の期限ギリギリまで見極める必要があるとの意見もある」 と伝えている。
今回、これまで感染症専門医など医療系が中心だった諮問会議に、あえて4人の経済専門家を入れるなど、経済再開に前のめりの政府に対する不安を、産経新聞「知事、宣言解除の不安 往来自粛対処方針明記へ」が、こう伝えている。
「全国知事会長の飯泉嘉門徳島県知事は、西村康稔経済再生担当相との会議で、解除をめぐり『多くの知事が急速な緩みを気にしている』と指摘。京都府の西脇隆俊知事は『特定警戒都道府県とそれ以外との不要不急の往来は厳に慎んでいただきたい』と訴えた」
「神奈川県の黒岩祐治知事も『(警戒態勢を)緩めることによって感染者が爆発的に増えることは十分にありえる』と危機感をあらわにした」