新型コロナウイルスの最初のピークを迎えた国々が、ロックダウン(都市封鎖)措置の一部解除に踏み切っています。
ドイツではすべての店舗の営業が再開。多くの死者を出したイタリアでも製造業や建設業が再開して街や職場に活気が戻り始めました! とはいえ、感染が勢いを増すリスクは残ったまま。「第2波」の襲来にもおびえるなか、グーグルやフェイスブックは在宅勤務を年内まで延長する方針を発表しました。
果たして、職場でのコロナ感染リスクは大丈夫なのでしょうか?
まるで別世界! グーグルとフェイスブックの「超豪華」在宅勤務
新型コロナウイルスの感染が広がるなか、真っ先に「work from home」(在宅勤務)を導入したのはIT企業でした。感染がピークを越えた地域で、ロックダウン措置の解除が広がり職場に人々が戻り始めていますが、グーグルが当初は6月1日までだった「在宅期間」を、なんと2021年1月1日まで7か月も延長すると発表! 希望者は全員、年内は在宅勤務できるという驚きの「back-to-work strategies」(職場復帰方針)です。
同じく、「年内は在宅勤務」を奨励したのがフェイスブックです。6月6日にいったんオフィスは再開するものの、段階的に「職場のロックダウン」を行うと発表。「リモートワークが可能な社員は年末まで在宅勤務できる」とアナウンスしました。
さらに「この措置は、従業員と家族にとって、職場に戻るという重大な決意の『進化した状態だ』」とコメント。オフィスに復帰することに不安を抱える従業員とその家族に対して、不安が解消するまでは「在宅勤務」を続けられるという「進化した働き方」を提示しています。
もちろん、IT企業がリモートワークに適していることも背景にはありますが、それにしても、いきなり半年以上も在宅勤務の期間を伸ばすとは、ずいぶんと思い切った方針です。
さらに驚いたのは、フェイスブックは在宅勤務に伴う経費増と育児コストの負担を和らげる目的で、社員に1000ドル(約10万7000円)の特別ボーナスを支給したというのです!
在宅で仕事をする環境を整えるために、ウェブカメラなどのパソコングッズを「自腹で」購入したり、光熱費を気にしながら仕事をこなしたりしている身には、なんとも「豪華な」在宅勤務ではないでしょうか。
果たして、グーグルとファイスブックが示した「back-to-work」(職場復帰)プランに追随する企業が、どれほど出てくるのでしょう。各国企業の「出口戦略」に注目が集まります。
コロナ後のオフィスには「おいしいコーヒーが必要」?
グーグルとフェイスブックが年内まで在宅期間を延ばしたのは、裏返すと新型コロナウイルスの感染に対して「職場の安全は100%保証できない」ということ。世界最先端の技術を誇る両社でさえ、完全にウイルスをシャットアウトした「安全な職場」を提供することは難しいと考えているのでしょう。
欧米メディアによると、「職場でのウイルス防止策」として、オフィス入り口に自動検温装置を導入したり、職場の人数が一定数を増えると自動的に通知が届いたりする仕組みや、空気清浄状況を示す携帯用アプリなどの「ハイテク技」を取り入れる企業が増えているそうです。
コロナウイルスの感染拡大で人々の生活パターンが大きく変わり、人と人との距離を保つ「ソーシャルディスタンシング」が定着した今、英国バークレイ銀行の頭取は「都心の立派なビルに何千人もの従業員が出勤する働き方は『be a thing of the past』(過去の遺物になる)」と断言しています。
一方、こうした「職場のハイテク化」「在宅勤務の推奨」が進む中で、「一番必要なのは『おいしいコーヒー』だ」とする声もあります。
英国の企業コンサルタント曰く、
「これからの企業は、会社に出勤するのをためらう従業員をオフィスに引き寄せる工夫が必要だ。職場で『おいしいコーヒー』を提供することが必要になってくる」
とか。
「ハイテク技」か、それとも「おいしいコーヒー」か――。職場のコロナ対策は「これから」が本番です。
それでは「今週のニュースな英語」は、バークレイ銀行頭取の「be a thing of the past」を取り上げます。 まずは、一番シンプルな表現から。「もう、終わったことでしょう?」「何を今さら」といったニュアンスで使います。
It's a thing of the past
(それは、過去のことだよ)
The boom is a thing of the past
(そのブームは、もう終わったよ)
The romance between us is a thing of the past
(私たちの恋は終わった)
「コロナ後」で私たちの働き方がどう変わっていくのか。変わる職場と変われない職場との格差がますます広がっていくのか。先はまったく見通せないですが、新型コロナウイルスが「a thing of the past」(過去の遺物)だと言える日が早く訪れることを願うのみです。(井津川倫子)