「国が基準を示さないなら大阪府独自で」と、吉村洋文知事が2020年5月5日に新型コロナウイルス対策で制限している社会活動再開への「出口戦略」を示す「大阪モデル」を発表したことが物議を醸している。
国に先駆けて「出口戦略」を出したことにカチンときた西村康稔経済再生担当大臣が同日の会見で、「(吉村知事は)勘違いされているのではないか」と不快感を露わにしたのだ。
吉村知事は即座にツイッターで「ご迷惑をおかけした」と謝罪したが、この両者のバトル、ネット上では、
「勘違いはどっちだ。さすが、吉村知事はオトナの対応だ。西村大臣の器の小ささがひどすぎる!」
と、圧倒的に吉村知事に軍配を上げる声が多い。
「強い違和感を覚える」と敵意をあらわにした西村大臣
吉村知事は5月5日の記者会見で「大阪モデル」を発表する際、
「大事なことはまず数値で示すということなので、数値で出口戦略をする。本来は国で示していただきたかったが、それが示されないということだったので、大阪府としてモデルを決定した」
と説明していた。
これは、安倍晋三首相が5月4日に緊急事態宣言の延長を発表した際、宣言を解除する目安を「総合的に判断する」と相変わらず基準をあいまいしたままだったからだった。
ところが、吉村知事が「大阪モデル」を発表したことについて記者団から聞かれた西村大臣は5日、ムッとしたような表情でこう語った。
「なにか勘違いされているのではないかと、強い違和感を覚える。各都道府県の裁量で休業要請なり解除なりを行っていただくわけなので、『休業要請を解除する要件の基準を国が示してくれないから』というのは大きな矛盾だ」
と語気を強めた。そして、
「今後の出口について(国として)責任をもって数値・基準をお示ししたいと考えている」
と答えたのだった。
吉村知事は5日、ツイッターに、
「今後は発信を気をつけます。ご迷惑をおかけしました」
と投稿して陳謝。すぐに矛を収めた。
ところで、「大阪モデル」とは何か。大阪府のホームページで詳しく紹介されている。基準は次の3つだ。
(1)市中での感染拡大状況が、感染経路が不明な新規感染者が10人未満に収まる。
(2)同じく検査を受けた人に占める陽性者の割合(陽性率)が7%未満に収まる。
(3)医療機関のひっ迫状況の緩和条件として、重症病床の使用率が6割未満になる
この3点を「警戒信号の消灯基準」とした。(1)と(2)の数値は日々の変動が大きいため、過去7日間の平均をみる。そして7日連続で基準を満たせば段階的に自粛を解除していく。満たさなければ元の「警戒信号の点灯」に戻るという流れだ=図表参照。さらに大阪府民を励ますために基準を満たした日は、大阪城公園のライトアップを緑、警戒が必要ならば黄、基準の2倍以上の数値が出たら赤と色分けして府民に知らせるという。