新型コロナウイルスの感染拡大の影響で空気清浄機の注目度が高まるなか、農業機械や建設機械の製造・販売で知られるクボタが2016年に発売した、多くの人が利用する医療施設やオフィスなどの業務用空気清浄器「ピュアウォッシャー」の販売に再び力を入れている。
クボタでは、広いスペースをカバーするとともに、業務用ならではの機能でコロナ対策に使える空調設備として売り込む。
加湿機能付き空気清浄機、2~3月期に前年比39%増
市場調査のGfK ジャパンが2020年4月22日に発表した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による家電・IT市場への影響」によると、空気清浄機の販売台数は2~3月期で前年同期比18%増となった。売り上げをけん引したのは加湿機能を搭載したモデルで、このモデルに絞ると前年の同じ時期と比べて39%も増えた。
空気清浄機は近年、花粉やホコリ、ウイルスなどの空気中に漂うさまざまな微生物や菌などを除する機能を搭載しており、人々が「快適に安心して暮らせる」製品へと「変化」してきた。コロナ禍のなか、その機能が改めて認識され、売り上げを伸ばす契機になった。
例年、この時期は花粉対策として購入する人が多いが、適度な湿度を保つことが新型コロナの感染症対策となることから、加湿機能付き空気清浄機の需要が拡大したと考えられると、GfKジャパンはみている。
「安心できる空間調整を」というニーズは、いまや医療施設や介護施設はもちろん、一般のオフィスにも広がっている。ただ、家電量販店で市販されている家庭用空気清浄機が適用する床面積は20~30畳程度で、医療施設やオフィスなどでは設置台数が複数必要になる。
クボタの「ピュアウォッシャー」は、すでに医療施設をはじめ、保育園や幼稚園、店舗や工場などが利用しており、 2020年4月現在で全国の260社に約700台を設置している。「広い空間を1台で」のキャッチコピーで、一般のオフィスなどへの販売を拡大する。
販売に当たるクボタ計装 CS企画部のピュアウォッシャー営業部、寳田俊介(ほうだ・しゅんすけ)氏は、
「コロナウイルスへの直接的な効果についてはまだ実証されていませんが、今年に入って引き合いが増えていることは事実です。従来は病院や介護施設での採用が多かったのですが、今後はより幅広い領域で導入していただければ、と思っています。なかでも、オフィス向けの営業を強化するため、自前の営業に加えて、大手機器販売会社などとのパートナー連携についても検討しています」
と話す。
社員が「微酸性電解水」持ち帰り、家族の健康管理に
クボタの「ピュアウォッシャー」が注目されているのには、ワケがある。1台でテニスコート一面分(約200平方メートル)の広い空間の加湿や除菌、消臭、除塵できるカバー力と、水道直結式の運転で水の給水や排水が自動でできるため、家庭用空気清浄機にあるような給排水や手入れの手間がないというメリットがある。さらには除菌や清掃に使える、高い殺菌力を誇る次亜塩素酸を多く含む「微酸性電解水」を、直接取り出せることだ。
2020年3月上旬に導入した、広島市のタクシー・バス会社である株式会社フォーブルの取締役本部長の山崎勇二氏は、
「今回導入したピュアウォッシャーは、1台で事業所をまかなえる清浄力に加え、生成される『微酸性電解水』は、除菌スプレーとして車両や事業所内の清掃に使っています。また、従業員に持ち帰ってもらい、個人や家族の健康管理にも役立てています」
と説明する。
「当社では『究極のおもてなし』を追求してきました。それを担うのは社員一人ひとりという考えのもと、社員の安全・安心の取り組みとしてピュアウォッシャーを設置しました。お客様をお迎えする車両内での取り組みに加え、従業員が集う事業所内の取り組みを進めることで、よりいっそうの安全と安心と、『究極のおもてなし』の提供につながると考えています」(山崎氏)