「断りたい」
「気乗りしない」
「言われるがままになってしまう」
そんな断り下手の人はとても多いのです。「嫌われたらどうしよう」「気まずくなったら嫌だ」。そんな不安感から断り切れずに、流されてしまいます。
そのような時にはどうすればいいでしょうか――。
「こころの予防医学 ~偽りの仮面を投げ捨てて自分らしく生きる方法~」(田倉怜美著)ギャラクシーブックス
「ストレスコーピング」を理解しよう
著者の田倉怜美さんは、「断りたい」「気乗りしない」場面の対処方法について、次のように解説しています。
「誰だって波風を立てたくはないものです。けれども、そのままずるずると流され、行きたくもない誘いに乗ったり、本当は賛同できないのに賛同するふりをしたりする日々のままで本当に良いのでしょうか。心の底ではその生活にさよならしたいのではないでしょうか。本心では、変わりたいと変化を望んでいるのだと思います」
さらに、
「変わるためにはまず、なぜ断りたいと思っているのに、断ることができないのかを考えましょう。断れない人のほとんどが『自分に自信を持てない』と言います。自己肯定感が低いため、自分の意見を言うこと、他の人とは異なる主張をすること、他の人の誘いを断ることに対してどこか罪悪感や申し訳なさがあるように思えます」
と、言うのです。
結局、自己肯定感が低いため、自分よりも人のことを優先してしまうのです。それが断れない行動としても表れてしまいます。まずは、自分の好きなところを自覚することが大切です。
「自分の価値を認めると、自分を後回しにし、おざなりにすることが減ります。周りの人と同じように、自分のことも大事にできます。そうした習慣を繰り返すことで、だんだんと『自分の意見も言っていい』『断ってもいい』と自分の行動に許可を出し、少しずつ習慣を変えることにつながるはずです」(田倉さん)
そもそも「自己肯定感」とはなにか?
そこでオススメしたいのが、簡単なストレス対処法です。今回紹介する本は「ストレスコーピング」のメソッド集です。
「ストレスコーピング」とは、仕事や人間関係など様々な場面でストレスを感じたとき、上手にストレスに対処する方法のことです。過剰なストレスは日常生活を過ごすうえで、妨げになります。正しい方法を身につけて生活で活用していくことが大切です。
以前、成果主義の人事制度がブームになったことがあります。成果主義は日本型の組織にはなじまず、社員のマインドは疲弊していきました。その後、成果主義を効果的に定着させる理論としてEQ( Emotional Intelligence Quotient)がブームになります。
私は当時、EQを専門的に研究する組織に所属していました。この組織はEQ理論提唱者と共同研究をしていた世界唯一の研究機関になります。ディレクターとして、営業、ソリューション、プロファイラーなどを統括するミッションを遂行していました。その後、EQブームは収束していきますが、新たな理論として「自己肯定感」が注目されるようになります。
「自己肯定感」とは、EQ理論から派生した理論だと認識しています。「自己肯定感」は、EQの私的自己意識と抑鬱性を掛け合わせた素養です。うまくコントロールするには、EQの楽観性やセルフエフィカシーが必要になります。
「自己肯定感」が受け入れられたのは、阻害要因を解決するための打ち手を見つけることが、容易な点ではないかと考えています。
本書には、田倉さんのカウンセラーとしての思いが詰まっています。「ストレスコーピング」を、平易に理解したい人にはオススメの本ではないかと思われます。(尾藤克之)