挿画の迫力に魅入られたオススメの1冊
三輪さんが売れ筋の一冊として選んだのは、「講談社の絵本 ガリバー旅行記」(文:西条八十/絵:吉邨二郎 講談社 1949年)だ。ページをめくれば、鮮やかな色彩でガリバーと小人の国の様子が広がっている。吉邨二郎のダイナミックな挿絵が美しく、ガリバーの体験した不思議な世界が生き生きとした線で描かれている。
「これは自宅にも保管してあります。当時は比較的高価なもので、講談社の絵本のシリーズが揃っている友人がとても羨ましかった。夢中になって読みましたね。今見てもこの挿画のインパクトに唸らされます。童話シリーズは不動の人気ですね」
オススメの一冊は、「ヤシノ木ノ下」(文:土家由岐雄/畫:赤松俊子 小學舘 1942年)。占領下のシンガポールを舞台にした絵本で、物々しいストーリーながら赤松俊子(のちの丸木俊)の挿画が光る。
三輪さんは
「現地の人々の様子を温かい眼差しで見つめているような絵が、いいんです。今見てもタッチや色彩が素晴らしい。丸木俊の原点が垣間見える、貴重な一冊です」
と語る。