国際化のチャンス! 「9月入学」は意外に簡単?
ところで、手続き上の問題はどうなるのか。産経新聞「『9月入学』議論に熱」によると、入学を4月から9月に変えること自体は意外に簡単だという。
「4月に新学年の始業を迎える現行制度は学校教育法施行規則で規定されているだけで、制度改正のハードルはそう高くない。すでに、大学は2008年の規則改正で学長が独自に学期始めを定められるようになった」
実際に東京大学は2011年、優秀な留学生が集められない背景には、国際的には「9月入学」が主流で、日本が遅れていることにあるとして、「9月入学」導入を検討した。しかし、高校卒業後の空白期間や、多くの企業の採用時期とずれるため断念した経緯がある。
ただし大学入学以外では、課題は山積みだ。日本経済新聞「9月入学、実現へ課題多く 移行期の調整必要、法令の改正多岐に」が、こう説明する。
「学校は子どもの受け皿になっており、移行期の4月~9月について、保育所の受け入れ態勢を検討しなくてはならない。3月卒業にあわせて設定している公務員など公的資格試験とのずれの調整も必要だ。これまでの『年度制』を基本とした関係法令の改正も不可欠だ。会計年度を規定する地方自治法や財政法など多岐にわたる」
というから、行政の膨大な作業にくわえて社会のコンセンサスが必要になる。
さて、「9月入学・始業開始」になると、どんなメリット・デメリットがあるのだろうか。産経新聞と日本経済新聞(ともに4月29日付)の表をまとめると、こうなる。
【メリット】
(1)休校措置が長期化した場合にうまれる教育格差を是正できる。
(2)秋入学が主流の海外と合わせることで、留学がしやすくなるし、優秀な留学生も受け入れやすくなる。また、国際化を促すことになる。
(3)受験時期が夏になり、積雪やインフルエンザなどに左右されなくなる。
(4)(今年度にかぎり)遅れた学習を焦らずに取り戻すことができる。
【デメリット】
(1)就職時期や国家試験の日程などの見直しが迫られる。
(2)4月から始まる国や地方自治体の会計年度とズレが生じる。
(3)ここ約100年間、「4月入学」が文化・習慣になってきたため、国民的な理解が得られるか不透明。
(4)(移行期)私立校の収入減による経営悪化が懸念される。
ネット上では、どんな意見が多いのだろうか。ヤフーニュース「みんなの意見」が「新学期の9月開始、どう思う?」と緊急アンケート調査を行ったところ、2020年4月29日正午現在(投票総数6万5247票)では、「賛成」(72%)、反対(22%)、「どちらとも言えない」(6%)で圧倒的に多くの人が賛成だった。
しかし、個々の投稿意見を見ると、「反対」の人のほうがほとんどという、不思議な逆転現象がみられる。
まず、「賛成派」の代表的な意見をみてみよう。
「9月入学は、欧米や中国など世界の多くの国々が採用しており、外国人留学生も増えることになるだろう。ただ、卒業が夏になるので、多くの企業や官公庁で4月に新卒者を採用する雇用慣行がネックとなる。日本企業も通年採用を増やせば、学生もボランティア活動や海外留学などに充てる『ギャップ・イヤー』(編集部注:高校卒業から大学への入学、大学卒業から大学院への進学までの期間のこと。欧米ではこの期間をあえて長く設定し、その間に大学では得られない経験をすることが推奨されている)を取りやすくなるメリットがある。9月入学は、日本の教育制度や雇用慣行などを幅広く見直すいい好機になる」
「この際だから、今だからこそ、現実的に検討して欲しい。子どもファーストで考えることが大切だ。このまま5、6月もまともな授業ができない状態が地域によって続くようだと、学力格差がかなり大きくなり、受験が不平等になる。既存のしがらみを脱却して変革するチャンスだ」
「混乱はあると思うが、だらだらコロナが続き、また1か月、また1か月と延長し続き心が乱されるくらいなら、9月スタートにしてもらったほうが気持ちはスッキリする」
「私は中学生の子供がいますが、9月スタートでも全員1年留年でも賛成です。一番イヤなのは、見切り発車で休校を解除して、またちょっと登校しては感染者が増えて、また休校の繰り返しで、子供たちの心身が摩耗することです。どちらにしても9月スタートを決めて、その間のオンライン授業の整備を急いで欲しいです」