新型コロナウイルスの感染拡大によって学校の休校が長期化していることを受け、新学期スタートを9月にしようという動きが急浮上している。実現すれば、明治以来の「4月入学・新学期」という学校教育の伝統どころか、社会全体の幅広い制度の大改革につながる。
2020年4月29日の衆院予算員会では安倍晋三首相が「前広にさまざまな選択肢を検討していきたい」と前向きに踏み込んだ答弁を行い、一気に導入の流れに進んだかにみえる。
ネット上では、
「9月入学は世界のスタンダードだ。コロナ禍をチャンスととらえて日本社会の大改革を進めるべきだ」
という賛成意見と、
「どさくさに紛れて今、断行するにはあまりに影響が大きすぎる。じっくり時間をかけて進めるべきだ」
という反対意見が大激論を交わしている。ネットの声を拾うと――。
高校生のツイートから広まった「9月新学期」の動き
4月29日の衆院予算委員会での「9月入学・新学期」に関する国民民主党の玉木雄一郎代表の質問に対しては、萩生田光一文部科学相も安倍首相以上に前向きの答弁を行なった。
「そんなに簡単なことではないが、この状況ではいろいろなことを考えていかないと学びの補償はできない。わが国の社会全体として広く国民の間で認識が共有できるなら大きな選択肢の一つだ」
と述べ、政府全体が「9月入学・新学期」に動き出していることを示唆したのだった。
そもそもこのアイデアはどこから出たのか。朝日新聞(2020年4月28日付)「9月始業じゃだめですか 学校再開見通せぬなら...」によると、高校生の「学期の始まりを9月にして僕たちの学校生活を守る話」という4月1日のツイートがきっかけのようだ。9月始業を提案する内容に、9万7000以上の「いいね」がついた。
ネット署名サイトでも9月始業も求める声が複数あり、大阪市の公立高校生が「全員が9月から平等に教育を受けられるようにしてほしい」と呼びかけるサイトや、東京都内の公立小学校に子どもが通う保護者の「教育格差を広げないで」というサイトなどを、朝日新聞は紹介している。
こうした動きが野党や知事たちに広がった。毎日新聞(4月29日付)「9月入学案急浮上 休校長期化、知事らも要請」が、こう伝える。
「9月入学案は今週に入り野党を中心に急な動きを見せ始めた。国民民主党は27日、実現に向けたワーキングチームを発足させた。日本維新の会も同日、9月入学を盛り込んだ提言をまとめた。宮城県の村井嘉浩知事は27日の会見で『入学時期を9月にずらすことも大きな方法』と述べ、知事会を通じて政府に提案する考えを明かした」
この提案に、大阪府の吉村洋文知事や東京都の小池百合子知事も賛意を示したのだ。