重要なのは施策を打ち出す「順序」
想定外の危機発生時には、まず同様の問題の連鎖が起きないように、その時点での有事管理を徹底し、危機を脱した時点で有事管理を解いて緩やかな平時管理を定めて、それに移行する、という解決方法は記憶にとどめておきたい有事対応策です。
国民へのマスクの一律配布も、大いに物議を醸した一件でした。これは多分にタイミングの問題であったと思われます。コロナ危機の下で国民の多くの人たちが必要としていたのは一律配布の給付金であり、それが多くに人には行き渡らないということになりそうな折に、「国民に一律マスクを配布します」とアナウンスしたこと。マスク配布の善し悪しの問題ではなく、マスクの一律配布が実行策としてアナウンスされ、行動に移されたことで、世論の方向に遅々として進まない給付金策との比較がクローズアップされ、政策の優先順位的に主客転倒の印象が強くなってしまったと思われます。
有事であるからこそ、リーダーの策の打ち出しに関わる順序というものも、大変重要になってくるのです。できることからやるのではなく、重要なこと、より効果の高いことから手を付けるべきなのです。
最後にもう一点、物言いがハッキリしないということが日本の政治家には多いように思います。イエスなのかノーなのか判然としない。イエスを匂わせながらも、逃げ道を残すような物言い。
これは平時における政治家特有のものが、ついつい出ているのかもしれませんが、有事下においては我々下僕(しもべ)の者からみて、不快感しかないことを今回改めて実感しました。
やるのかやらないのか、右へ行くのか左なのか、有事で皆が動揺し精神が正常さを失っている時ほど、リーダーの明確な言葉の表現は、何より危機を乗り切る求心力となることでしょう。(大関暁夫)