最初は厳しく、徐々に緩く......
有事に求められることは、まず眼前の難局をいかに迅速に乗り切るかが最優先されるべきであり、長期的な展望は難局を乗り切ってから検討すべき問題であるのです。そしてもう一つ、選択される策により組織の和の乱れやリーダーへの求心力の低下が懸念されるなら、その策は取るべきではありません。
和の乱れやリーダーへの求心力低下は、有事対応では確実にマイナスに働くからです。今回は言ってみればリーダーの選択の誤りに、組織の重鎮から「その戦略で押し切るなら、私は降ります」と言われるまで、自身の戦略的誤りに気がつかなかったわけで、「裸の王様」に近い状態にあったと言えそうです。
給付金問題に次いで世論的に物議を醸しているのが、「緊急事態宣言」に関する具体的な対応策の提示方法についてです。この点では小池百合子東京都知事が、明確に政府のやり方に相反する主張をして政府と対立していたのですが、小池都知事の考え方のほうがリーダーの有事判断のポイントを捉えていたと思います。
小池都知事は、緊急事態宣言とともに業種指定による自粛要請をするべきとの主張でしたが、政府はこのタイミングでは企業への自粛要請はしないという方針でした。
政府の考えは、「まずは2週間程度、緊急事態宣言の効果を見定め、そのうえで必要があれば自粛要請を行なう」というものでしたが、小池都知事は緊急時の規制の網は「はじめに厳しく、規制効果が現れてきたら徐々にそれを緩めていくのがセオリーであり、政府のやり方はまったくの逆」と、これを真っ向から批判したのです。
これは正論です。当初、政府の方針に従って営業自粛の業種を指定していなかった東京都以外の緊急事態宣言対象の6府県は、次々と業種指定による営業自粛を訴えることとなり、最終的に政府として業種を指定したうえで営業自粛を呼びかけることに至りました。結果的には、正論が通ったわけです。