新型コロナの「真実」 クルーズ船ルポの感染症医師が明かした「パニック」への対処法

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パニックも「リスク不感症」も問題

   リスクがあるときには、コミュニケーションが非常に大きな影響を与える。2011年の東日本大震災にときはSNSが普及しはじめたころで、それ以前のどんなリスク時に増して、携帯端末での情報収集、情報発信が盛んに行われた。すでに充実した機動力を備えていたテレビも影響力も大きく、街を飲み込んでいく津波の映像は、見る人を恐怖に落とし入れた。

   なかでも、リスクが感染症であるときには、効果的なコミュニケーションが非常に重要。頭痛がしたり、胃が痛くなったりするのはもちろん、ガンや心筋梗塞などの病気はどれも怖いものだが、直接「外」からやってくることはない。

   しかし感染症の病原体は外からやってきて、しかも見えない。コミュニケーションを誤れば、感染症の実害以上に「パニック」の発生が問題になることもある。

   とはいえ、パニックが起きさえしなければよいというものではない。逆に感染症のリスクに「不感症」になって回避行動をとらないという状態になるのも問題。コロナ禍に見舞われている今は、どちらかというと、こちらに近いかもしれない。

   リスクをどう捉え、どう伝えるか――。十分か、そうではないかという評価は別にして、安倍晋三首相や小池百合子東京都知事がことあるごとに、記者会見を開いて状況や対策を説明しているのは、リスク・コミュニケーションの実践だ。

   本書では、「リアルで効果的な」感染症のリスク・コミュニケーションが論じられている。その内容は、感染症のリスクを伝える立場の人たちにはもちろん有用だが、感染のリスクにさらされているわたしたちにとっては、本書を読むと、問題を担当している政治家や専門家が何を伝えようとしているのかが、より理解できるに違いない。

「『感染症パニック』を防げ! リスク・コミュニケーション入門」
岩田健太郎著
光文社
税別860円

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