国民1人あたり現金10万円の現金給付が2020年4月21日、正式に閣議決定された。早ければ5月から受け付けが始まるということで、市区町村からの給付の連絡を心待ちにしている人が多いだろう。
しかし、早くもそれに付け込んださまざまな手口の便乗詐欺が横行。さながら「特殊詐欺のオーバーシュート(感染爆発)」状態になっており、総務省と警察庁、消費者庁、全国の市区町村が一斉に注意を呼び掛けている。
高市早苗総務相の友人のスマホにも怪しいメール
こうした事態となった発端は、4月21日の閣議決定後に行なわれた現金給付担当大臣、高市早苗総務相の記者会見だった。
高市総務相は、
「きのう奈良県に住む私の友人のスマートフォンに、給付金の手続きをかたった不審なメールが届きました。メールの指示に従ってURLを誤ってクリックした場合はマルウェア(編集部注:悪意のあるソフトウエア)に感染して、銀行の口座番号やキャッシュカードの暗証番号など、スマホの中の情報が全部抜かれてしまうということもございます」
と注意を呼びかけたのだった。
さっそく同日、総務省と警察庁、消費者庁はホームページ上で「それ、給付金を装った詐欺かもしれません!」との標語を記した告知文を掲載した=図表1参照。
それによると、給付金の手続きは次のように行われる。
(1)住民票がある市区町村から郵送されてくる申請書に世帯主が本人名義の金融機関の口座番号などを記入し、口座が確認できる書類と本人確認の書類(運転免許証など)のコピーを一緒に返送すれば、家族分の給付金がまとめて振り込まれる。
(2)マイナンバーを持っている人は、マイナンバーカード所持者が利用できる政府のオンラインサービス(マイナポータル)から振込先口座などを入力して電子申請できる。
いずれにしろ、市区町村や総務省が直接世帯主にメールを送ったり、電話をかけたりすることはあり得ないのだが、やっかいなのは、まだそれ以上の細かな手続きや委託業者などが決まっていないことだ。
総務省などは、
「具体的な給付方法は決まり次第、すぐお知らせします。それまでは行政からの問い合わせや連絡などはすべて詐欺だと疑ってください」
と呼びかけているありさまだ。
伊豆諸島の三宅村にも怪しい電話
具体的には、どんな手口が横行しているのか。警視庁は公式ツイッター上に詐欺のショートメールの具体例を公開した=図表2参照。タイトルは「給付金10万配布につき、お客様の所在確認」とあり、「各携帯電話キャリア会社を通し、国民の皆様へ配布していく事となりました。詳細確認とお手続は下記URLへアクセスしてください」との文言があり、文中のURLに誘導している。
ここをクリックするとアウトだ。個人情報を抜かれてしまう。さらに、「有効期限は4月30日。上記期限を過ぎますと一旦打ち切りとなります」といった注意書きが記され、不安を煽っている。
警視庁によると、ショートメール以外にも次のような不審な電話被害があった。
(1)西東京市の複数の女性宅に「東京都コロナ対策本部」を名乗る男から「10万円の給付金が出るので市役所職員が書類を持って行く」と電話があった。
(2)伊豆諸島の三宅村の70代女性宅に、現金給付の代行サービスをしている者を名乗る女から「現金10万円が振り込まれる...」と自動音声ガイダンスが流れてきた。
また、東京都文京区でも詐欺が横行しており、文京区役所は4月23日、ホームページ上で次のような具体的なケースを紹介、注意を呼び掛けている。
(1)文京区新型コロナウイルス対策室を名乗り、電話で「文京区では、皆様に助成金をお配りしております。区民1人当たり10万円です。つきましては、キャッシュカードの番号、または銀行口座に振込みますので口座番号を教えてください」と問い合わせてきた。
(2)代行業者を名乗り、「区役所の10万円給付申請手続きを代行しているので、銀行の口座番号やキャッシュカードの暗証番号を教えてほしい」というメールが届いた。
コロナより怖~いワルが闊歩している現在、政府が具体的な給付方法を決めるまで、家の中でじっと待つのが得策のようだ。
(福田和郎)