期待を胸に意気揚々と新生活を始めたものの、新型コロナウイルスの影響で出鼻をくじかれ、すでに不安を募らせている新社会人も少なくないはず。研修もなんだか中途半端。「3密」回避で、同期生や先輩、上司らとのコミュニケーションもままならない。
そうなると、ここはセルフで補い、研修するしかない。テキストには、本書「入社1年目でマスターしないと恥をかく 仕事の基本見るだけノート」がよく合いそうだ。
「入社1年目でマスターしないと恥をかく 仕事の基本見るだけノート」(平野敦士カール監修)宝島社
「正社員」と「アルバイト」の違いから叩き込む
毎年、新年度を迎える前の3月ごろになると、新社会人を読者に想定してマナー本が書店に並び、雑誌では特集が組まれる。本書もその中の一冊だが、内容の幅広さは群を抜いている。
「プロローグ」で「社会人になったら何が変わる」から説き起こし、学生時代のアルバイトと正社員の違いをはっきりさせる。
何が違うのか?
「正社員は『余人をもって代えがたい存在』であるべき点」
「アルバイトはいずれ別の人に代わることが前提だが、正社員は継続的に会社や組織に貢献することが求められる」
この説明がすべてのアルバイトと正社員の違いについて、真であるかどうかはともかく、学生時代にアルバイトを経験した者にとっては納得できるのではなかろうか。
プロローグのあとは「身だしなみ」や「立ち居振る舞い」から「電話応対」「メール」「来客応対・訪問」と続き「人間関係」から「飲み会」にまで至る。自然とうなずいてしまう解説に加え、いずれもディテールにこだわったイラストつきでさらにわかりやすい。
エピローグでは「転職も一つの選択肢」として、円満退社のプロセスや退職願の書き方の解説で閉められる。本書のタイトルには「入社1年目でマスターしないと恥をかく」とあるが、会社勤めをしている間にわたり使えそうなマニュアルといえる。
「天職」つかむために必要なこと
監修者の平野敦士カールさんは、さまざまな企業の取締役を歴任。ビジネススクールなどでの講師歴も豊富な経営コンサルタント。米国イリノイ州生まれで、東京大学経済学部卒業後に大手銀行に就職。その後、NTTドコモでiモード企画担当部長を務め、2007年に米ハーバードビジネススクールの准教授とともにコンサルティングと研修サービスを行う会社を創業し社長に就任した。
自らの就職活動から新社会人時代を振り返ったとき、平野さんは就職して働くことに恐れを感じていたという。就職した大学の先輩から朝9時前から20時までが勤務時間と聞き、10時間以上も会社で仕事をするなんてとてもできないと思ったからだ。
だが、最初に入った銀行で13年間勤め、NTTドコモでは7年間働いた。そして大学で教壇に立つなどして、経営コンサルタントとなり10年以上が経過した。こうした経験から、平野さんは、最初から「天職」に出会うことは滅多にないという。
「まずは与えられた仕事を一所懸命することで、次第に自分の向き不向き、好き嫌いが分かってくるもの」と平野さん。そのプロセスをうまくこなしていくうえで、本書の「仕事の基本」をマスターすることが大切だという。
「ほとんどの人は読書をしません。ほとんどの人は読書をしても実行しません。ほとんどの人は実行してもそれを継続しません。だからこそ、あなたが本書を読み、実行して継続すれば、それだけであなたは仕事での成功に一歩近づくことができるのです」
新社会人を対象にした類書では、マナーのためのマナー本という印象が強いが、本書は、仕事をするため、また希望するキャリアを実現するために必要なことがまとめられている。
「入社1年目でマスターしないと恥をかく 仕事の基本見るだけノート」
平野敦士カール監修
宝島社
税別1200円