「保守的と言われる産経新聞も使っていますよ」
これらの意見に対して、執筆者や項目の存続を望む人々は、こう反論する。
「アベノマスクという用語はたくさんのメディアにあります。AFPから朝日から、おそらくすべてに近い日本語メディアに見られます。ある意味、一つの社会現象ですし、保守的見地から不快に感じるのであれば、布マスクを配ることが防疫に役立つという意見を、出典を挙げつつ紹介することもできるわけです。どちらの視点から書くこともできますが、それは今後ご参加下さる書き手さんに期待したいと思っております」
「ニュース記事検索をしたところ、アベノマスクと題するメディアの記事が100件以上、出てきました。保守的と言われる産経新聞にもその表題の記事がありますし、アベノマスクという用語が実在し、広く使われていることは疑いないのですから、用語を説明する記事を作ってよろしいと思います」
これに対して削除派は、こう記述している。
「蔑称である『アベノマスク』では記事名として不適切すぎます」
差別語だから載せるべきではないというのだ。存続派は、こう反論する。
「政府がこのマスクに正式名称をつけるまではアベノマスクでよろしいかと思います。例えば、『匈奴』という項目がありますが、これは古代に中国人がモンゴル高原の民族を指して付けた蔑称ですが、他に名称がないためにその名前で記事になっております」
「アベノマスクは蔑称でしょうかね? あだ名であることは、間違いないですが。まあ、いいのではないでしょうか。古代ローマの皇帝ウェスパシアヌスが、公衆トイレを使う市民から料金を取るようになると、市民たちは以後、公衆トイレをヴェスパシアーノ(Vespasiano)と呼ぶようになったそうです。イタリアでは現代でも男子公衆トイレのことをそう呼ぶそうですが、人間の歴史ではそんなことは、ままあることです」
などと論争は古代中国、古代ローマの歴史にまで飛んでいるのだった。「アベノマスク」がウィキペディアから削除されるのかどうか、しばらく目が離せない。
(福田和郎)