世界の「リーダー」が初めに明かしたのは「最悪のケース」
すでに多くの方が指摘していますが、海外メディアでは「クラスター」というワードはあまり目にしません。各国のリーダーが国民に感染防止の協力を呼びかけた手法も日本とは異なっていました。
トランプ米大統領も、マクロン仏大統領もメルケル独首相もジョンソン英首相も、共通していたのは「初めに最悪のケース」を明らかにしたことです。
「感染症対策を何もしない」場合に「最悪の場合○○万人死亡する」可能性を明示。次に「死者を○○人に押さえたい」という目標を示す。そして「人と人との接触で感染が広がる」といったウイルスの特性を強調して「感染ルートを断つために外出を控えてほしい」と「手段」を強く訴えました。
日本では、「フランスは休業補償を○万円払った」「申請してたった○日でお金がもらえた」といった諸外国の手厚い補償が注目を集めましたが、休業補償さえも「手段」に過ぎません。「死者を最小限に抑えるために家にいてほしい。そのために必要なお金は国が補償する」という考えです。
最初に「○○万人死亡する可能性がある」と発した効果は、「誰でもウイルスに感染する可能性がある」ことを実感させたことでしょう。多くの人が、ウイルス感染は「他人ごと」ではなく「自分ごと」だと認識しました。
一方、日本では、「ライブハウス」や「スポーツジム」、「夜の歓楽街や飲食店」での感染リスクが強調され過ぎて、「特定の行動をした一部の人だけが感染する」という誤ったイメージが広まってしまいました。感染者へのいやがらせや医療従事者へのリスペクトの欠如につながっていないでしょうか?
緊急事態宣言の対象が全国に広がり、ゴールデンウイークを控えて「外出自粛」の要請がさらに強まっています。今こそ「Stay at home, Stay lives」(命を救うために家で過ごそう)のメッセージが重要です。
そこで安倍首相にお願いです。「人との接触を8割減らそう」と「手段」ばかり要請するよりも、「Stay at home, Stay lives」(命を救うために家で過ごそう)と、「手段」の先にある「目的」を伝えていただけないでしょうか。
「輝かしい日本」を取り戻すことでも「経済をV字復活」することでもない。私たち一人ひとりの「命」を守ることが一番大切な「目的」なのですから。(井津川倫子)