「さすが上級会社様ばかりの経団連!とんでもなくスゴイ!」
「ホントなのこの数字? 調査方法に疑問あり!」
「テレワークやってますよ感のエエカッコシーでは?」
日本経済団体連合会(経団連)は2020年4月22日、新型コロナウイルス感染拡大防止策として取り組んでいるテレワークの実態調査を発表。なんと会員企業の97.8%が実施しているという驚異的な結果が出た。
少し前に中小企業に会員が多い東京商工会議所が発表したテレワーク調査では、実施企業は26.0%だったから差は歴然だ。ネット上では驚きと同時に大企業集団に対する怒り、そして調査そのものに対する疑問の声があがっている。
「テレワークやってますよ感のエエカッコシーでは」
経団連がウエブサイト上に発表したテレワークのプレスリリースは、A4サイズ1枚分、3つの質問に対する答えを3つのグラフにしただけの、超簡単な内容。特に説明文もなかった。それによると、調査は4月14~17日に全会員企業1470社を対象に実施。406社から回答(回答率27.6%)がきて、テレワークを導入している企業は397社(97.8%)に達したという=図表1参照。
また、テレワークをしている人の割合については、出勤者の割合がもともと高い金融、電力、生活必需サービスなどの事業を除いたベースで、「8割以上」とした回答は36.1%にとどまった。「7割以上8割未満」が16.3%で、両方を合わせて52.4%だった。
政府は人と人との接触を「最低7割、極力8割」減らす目標を掲げているが、経団連傘下の大企業をもってしても、その水準を達成するのは難しいことが浮き彫りになった。
一方、東京商工会議所が4月8日に発表した調査(調査期間は3月13日~31日)によると、テレワークを実施している会員企業は26.0%だった=図表2参照。調査時期に差があるとはいえ、大企業群と中小企業群では圧倒的に差が開いていることがわかる。
ネット上では、経団連の調査結果について、驚きと批判の声が高まっている。
「これは、すごい調査だ。どうしてこんな調査結果を経済界のトップが嬉々として公表したのか。なんとも言えない気持ちになる。1人でもテレワークをしている人間がいると、テレワークを実施している企業になるから、『企業の数』ではなく、テレワークを行なっている『人の数』を調査しないとおかしい。経団連の論法なら『日本の97.8%で新型コロナウイルスに感染している』とも表現できることになる。47都道府県の中で岩手県以外すべてに感染者がいるわけだから」
「97.8%!って驚異的な数字でビックリしたけど、大企業ばかりの会員企業で、しかも回答率が27.6%だから、導入している企業ばかりが答えたのかもしれない。この数字は注意して見ないといけませんね。実際は全社員の何%がテレワークを実施できているのかが知りたい」
「経団連を構成する企業の数は頂点の約1400社。日本の総企業数は約350万社だから、いかに大企業と一般社会人が乖離しているかわかる。ほぼ同時期の4月10~12日に全国の就業者を対象としたパーソル総合研究所の調査では、テレワーク実施率は27.9%だった。大企業は昨年(2019年)施行された労働基準法改正で残業時間を削減する必要に迫られ、働き方改革の一環としてテレワークの環境整備を済ませている割合が高い。ひとつの会社の中にテレワークでできる仕事もそうでない仕事が混じり合っている」
「経団連加盟社ですが、現場のテレワーク率0%です」
「この調査結果は経団連の『やってますよ』アピールだろうが、東京商工会議所に比べ、調査がずさん過ぎる。実際に働いている人から見れば意味のない数字だ。中程では在宅勤務者8割以上を満たした企業は36%とありますが、常時8割なのか在宅経験者が8割なのか、わからない。調査するなら平均在宅勤務者割合を調査して欲しい」
「同感だ。この数字が独り歩きするのが怖い。安倍さんがそのうち自信満々に『経団連の発表では、日本のテレワークは~』なんて言い出しそうだ。この数字が国際的に報道されれば、ただでさえ日本政府が発表しているコロナ感染者数が、全世界で疑われているのに、やっぱりそうだったかという証拠になりかねない」
経団連に加盟する企業で働く人からも、続々と疑問の声が寄せられている。
「経団連に加盟している企業に勤務していますが、そもそも製造業なのでテレワークなんて絶対無理です。総務・人事・経理分野でも機密情報満載の仕事を家でできるとは思えないので、実質は『テレワーク』という名の『自宅待機』だと思います」
「自分の会社も経団連に加入しています。東京にある本社は取り組んでいますが、現場はテレワーク率0%ですから97.8%のいかにも取り組んでいる感にだまされないように!」
「イオンやイトーヨーカドー、ヤマトHDなんかも会員企業ですが、テレワークしているのは本部勤めのごくわずかな人だと思います。現場の人間は出社して働くしかありません」
「97.8%!とんでもない大ウソです。というより誤解を生む数字です。以前に経団連会長も輩出した大手化学メーカーで働いています。部署にもよりますが、社員のテレワーク率は最高の部署でも50%くらいです。GW中に緊急事態宣言を解除させようと、経団連の偉い人たちがデータ作成に必死なのかもしれません」
テレワークができない職種、会社で働いている人々からは、反発の声が多かった。
「私は日配物流の運転手ですが、今これまでの何倍もの配達量になり、1日40軒以上も納品しています。鍵やセキュリティを持って深夜から夕方まで走り回っています。上級国民の大企業さんとは温度差がありすぎます」
「自分は介護職をしていますが、本社はテレワークです。全国で1000人以上の介護職員がいますが、自分たち現場の人間は時短もなく高齢者さんの世話に追われています。もし感染したらどのような対策をとるか、具体的には決まっていないのが現実です。こういう調査結果の記事をみると、ガックリします」
「経理です。経理、財務部はいつも営業から文句を言われ、こんな状況になっても最後までテレワークなんかできません。押印文化、紙文化を国全体で変えてもらわないと、企業が新しいシステムを入れても、結局対応できないことになっているのです」
「こんな時期だからこそ工夫すればテレワークできるよ」
しかし、経団連会員の大企業でなくても、さまざまな工夫でテレワークに取り組んでいる人々からは、こんなエールが。
「私の会社は地方ですが、3月から週1回テレワークしていました。4月に入って週2回になり、週明けからは毎日になりそうです。当初は仕事の効率が下がと思いましたが、フタを開けたらまずまずできることがわかりました。今は書類関係をどうすれば出社せずに処理できるか検討中です。工夫すれば出来る職場はまだまだあると思いますよ」
「うちは製造業だし、自分の部署は開発なのでせめて間接部門は出勤率を30%以下に抑えようと頑張っています。セキュリティ云々あるからダメではなく、そこをどうにかするのが課題。シンクライアントでもテレワークツールでもなんとかできる、と、この状態になって知りました。ライセンス関係も特別措置とかベンダーと交渉すればなんとかなります! こんな時期だからこそ各企業のトップには考えていただきたいですね」
最後にこんな声を紹介する。
「事務職(エンジニア)ですが、基幹システムにリモートで入れます。通信業なのでセキュリティにはうるさいです。客との打ち合わせは電話会議かWEB会議。客もリモートワークです。社内は電話かメッセンジャーアプリを使って連絡し合います。やる気とかの問題より、会社が社内ITにどれだけ力を入れているかだと思います。最初はやりづらかったですが、慣れてくると出勤するのと変わらないパフォーマンスで働いています。ただコミュニケーション量は減りますね。顔を見ながら話すわけにいかないし、仕事中のちょっと雑談みたいなのはなくなりますね。それも大事なんですがね...」
(福田和郎)