「青年期ならぬ盛年期」
仕事上の危機は、役員として指導する上場会社が倒産の危機に直面したこと。社員のために、債権者のために、何とかしなければならないとの思いで再建の陣頭指揮を執ったという。前例がほとんどない法的再建の事例で作業は困難を極めたが、最終的に再生は成功。裁判官からは「奇跡的な再建」といわれた。
この「修羅場の経験」が、その後の経営コンサルタントとしてのスキルアップに大いに役立ったと振り返る。常に前向きなキャラクターなのだ。この再生作業と立ち直りのアフターケアでかかった月日は合わせて5年。いよいよ、大学院へ、と向かうところで今度は病魔に侵されていることがわかる。病名は前立腺がん。
手術前には、前向きなキャラクターもへこみ「もう生還できないかもしれない」と、遺言状まで書いたほど。だが「当時、治療に採用されたばかりの最先端の手術」を受けることができ、無事に生き延びることができた。
これら「思いがけないアクシデント」に見舞われれば、年齢的にも、一たん決意したこととはいえ、くじけても不思議ではない。大学院に入ってからも「もうダメだ、もう投げ出そう!」と思ったことは1度や2度ではなかったという。
吉岡さんは、年齢的な衰えがあったことを自覚。それに加えて、当初は予想もしていなかった苦難があった。それらを乗り越えることができたのは「妻の存在が、言葉に表せないほど大きかった」という。「博士号は、妻と2人で取得したもの」ともいう。
だが、最終的には本人の強い気持ちがあればこそだろう。「一般的には仕事の上では卒業するような年齢でも、『これからが自分の青年期ならぬ盛年期が始まる』との思いでトコトンやれば、夢を掌中に納めることができる。いま、その確信を得ることができた」。本書に述べられた「確信を得る」プロセスは、多くの人に参考になるに違いない。
「定年博士 ~生涯現役、挑戦をあきらめない生き方」
吉岡憲章著
きずな出版
税別1500円