現代は、2人に1人が100歳より長生きするという「人生100年時代」。日本をはじめ先進国では、社会の高齢化という課題の解決に目を奪われて、長寿化に合わせた仕組み作りはまだまだ。長寿化した、その分をどのように生きるかは個人に任されている。
「老後」や「定年後」の参考書には、ひとつのゴールのあとの余生の過ごし方的なことを述べたものが多いが、本書「定年博士 生涯現役、挑戦をあきらめない生き方」は、個人のゴールは自分で設定すべきものであり、会社の「定年」などはプロセスにすぎないことを教えてくれる。
「定年博士 生涯現役、挑戦をあきらめない生き方」(吉岡憲章著)きずな出版
60歳前に「もう一段の高みを......」
著者の吉岡憲章さんは1941年生まれ。2020年には79歳になる。2011年、70歳で多摩大学大学院に入学。3年後、73歳で経営学修士 (MBA)を取得した。そして、これで満足することなく、さらに研究を進め、2019年には77歳で同大大学院経営情報学研究科の博士課程後期を修了。経営情報学博士号(Ph.D.)を取得した。
喜寿での出来事に「わが国博士号取得者の中でも、十指に入るほどの高齢取得者でしょう」という。
そんな吉岡さんは、じつは1000社以上の中小企業を救ってきた「再建請負人」の異名を持つ経営コンサルタントなのだ。顧客のビジネスパーソンや中小企業経営者らから「自分たちがこの先の人生を、どのようにして、より有意義なものにすればよいかアドバイスが欲しい」という要望が多く寄せられた。それに応えようと上梓したのが本書だ。
大学院への再挑戦を考え始めたのは「60歳を迎えるあたりから」。会社務めの身ならば、定年後に思いをめぐらすところだが、その年齢をゴールなどとまったく考えていなかった。「経営コンサルタントとして、もう一段の高みを目指すことに挑戦したいと考えるようになった。自分の人生で、オンリーワンといわれるような、独特な『経営再生手法』をつくり上げたい。そのためにも経営大学院に入って、論理的に究明する勉強をしよう。そう決心した」という。
経営大学院への挑戦に、実際に乗り出すのは、「考え始め」てから10年以上あとの70歳のとき。じつはこの間に、仕事上の危機や闘病を余儀なくされることがあり、それらを乗り越えたうえでなお気力衰えず「もう一段の高み」を目指してMBAの取得を成し遂げたところ、さらに学ぶべきことがあることがあると気づいたという。