刷り込まれた「洗脳」を解除せよ
信用をベースにやりとりするフォーマットの一つが「お金」で、その信用を支えているのは国や政府だが、別の種類の信用を背景に台頭しているものの一つが仮想通貨だ。
堀江さんは「ブロックチェーン」の技術を使って信用を担保している仕組みをわかりやすく説明。複数の国名を挙げて、それらの国の通貨より信用度が高いことを指摘して、通貨の発行権が国家だけのものではなくなる時代が到来することもあり得ないことではないと指摘する。
仮想通貨にみられるように、時代が「お金」の多様化に向かっているとすれば、ひたすらに「1万円札」の価値を信じて貯めこむことは、必ずしも良いこととは言えない。
投資に向かうマネーも以前から比べれば多くなってはいるようだが、貯金を重視する人はまだまだ多い。日本が世界でも有数の貯金大国であるが、それは、堀江さんに言わせれば、多くの人がお金の正体を見誤ってのことであり、長らく続く教育がよくないのではないかという。
2019年、金融庁が「老後資金は2000万円必要」という報告書を発表し、大騒ぎになったことがあった。「2000万円ではとても足りない。3000万円は必要」などの報道に煽られ、「1000万円単位の貯金なんて、とても自分にはつくれない」とパニックに陥った高齢者が続出した。
日本の社会では「キャッシュを手元に置いておかないと不安になってしまう人が多い」。それは、家庭や学校での「刷り込み」が大きく作用しているというのだ。
「人生、何が起こるかわからない。いざというときに備えて必ず貯金はしておきなさい。親や教師から、こんなふうに教えられてきた人は多いはず」。堀江さんはこう述べ、自身も、両親から「お年玉を一度に使うな。何年分も大事に貯めておけば、今は買えないようないいものが買えるんだから」と言われて、貯金を強制された。
貯金することが「ゴール」そのものとされ、その一方で「貯金とはインフレリスクをまるで無視した危険な行為だということについては、誰も指摘しない」。
そして、多くの人が「お金の正体」を見失ってしまった。本書ではまた、そのことを知れば、いっそう「貯め込むことアホらしくなる」という金融機関の「金儲けのカラクリ」にも言及。堀江さんは「学校教育で刷りこまれた『洗脳』を今すぐにでも解除し、本当の意味でのマネーリテラシーを身につけるべき」と呼び掛ける。
「仮想通貨」や「貯金の『リスク』」のほか、「サブスクリプション」「セルフブランディング」など、新時代のお金の「稼ぎ方」と「生き方」について、全体で32のトピックスを堀江さん独自の視点で徹底解説した一冊。
「99%の人が気づいていないお金の正体」
堀江貴文著
宝島社
税別1200円