「解雇」に不満 しかし、会社に刑事罰はない
また、失業給付が認められた場合は、会社都合による退職になるので、すぐに給付が始まりますが、このような対処は企業側に法的な問題ないのでしょうか――。
企業が従業員と再雇用を約束し,失業等給付を従業員に受け取らせる目的で解雇して従業員が実際に受け取った場合、企業の代表者は詐欺罪(刑法第246条)の共同正犯や教唆により処罰される可能性があると考えます。
しかし、再雇用を約束したとまではいえないような場合、詐欺罪によって処罰することは難しいでしょう。では、このような場合は違法にはならないのでしょうか。
企業が、余った人員の整理を目的として従業員を解雇することを整理解雇といいます。整理解雇には、次のような厳しい要件が課されています。(1)人員削減の必要性(2)解雇回避努力を尽くしたこと(3)解雇される者の選定方法の合理性(4)手続きの相当性――といった、整理解雇の4要件です。企業として従業員のことを真剣に考え、最大限の努力を尽くして初めて整理解雇は行うことができます。
すなわち、これらをなにもせず、いきなり解雇したような場合には違法となるのです。
ただ、仮に整理解雇をしたとしても、企業に刑事罰が科されるわけではありません。上の要素を満たされずに従業員を解雇した場合、従業員がその違法を訴えて解雇の無効などを争うことはできますが、罰則の規定があるわけではないからです。
そのため、今回のようなケースでいきなり整理解雇を行ったとしても、法的には問題がないとはいえませんが、罰則があるわけではないということになります。