まさに「有事の金」。金(ゴールド)の価格が高騰している。地金大手の田中貴金属によると、金価格は2020年4月13日に1グラム当たり6513円(税込小売価格)を付け、イラン・イスラム革命直後に付けた1980年1月22日以来、40年ぶりに最高値を更新した。前日(10日)比でプラス32円だった。
金価格は、今年1月8日に米国とイランの全面的な軍事衝突が不安視された際に、6149円に急上昇。その後も新型コロナウイルスの感染拡大が世界的な経済危機に陥るとの懸念から、一段と値上がりした。
個人投資家の中には、利益確定に動こうという人も少なくないが、絶好の「売りどき」に動けずにいる。
金は「現物取引」
新型コロナウイルスの感染拡大で、世界中で経済活動が停止状態に陥り、株式市場は混乱。大きく売られ、株価は急落している。こんな事態に、株式に投資している人は気が気ではない。その一方で、「金」の価格が急上昇している。
現物資産である金は、価格は変動するが、保有していても金利や利息が付かない。しかし、株式や債券などと違って、金そのものに価値があるため、戦争や自然災害、世界恐慌やリーマン・ショックのような経済危機が警戒されると、「安全資産」として投資資金の受け皿となる。「有事の金」といわれるゆえんで、株式などの資産価格が下落するときこそ、上昇が期待できる。
そうしたなか、金価格が40年ぶりに最高値を更新した。金価格が値上がりしていることで、保有している金地金を「売り」に出して、利益を確定しようという個人投資家などは少なくないが、国から外出自粛が呼びかけられている中で、動くに動けない投資家もまた少なくない。
というのも、金は「現物取引」のため、直接、貴金属店に足を運ぶ必要があるからだ。金地金は貴金属メーカーなどが自社ブランドとして製造、販売しているため、店で買う(売る)のが一般的。店に行けば、面倒な手続きもなく、最も手軽で誰にでもできる「投資」方法なのだが、「(金地金は)電話で買うことはできますが、不正防止の観点から、売る際にはお店に現物を持ってきていただくことになります。お持ちいただいた現物を量ったうえで、当日の価格で買い取らせていただきます」と、田中貴金属工業の広報担当者は説明する。
ちなみに、40年ぶりの高値を付けた4月13日の買取価格は1グラムあたり6393円だ。