じつは奥が深い「サブスク」事業 従来の課金ビジネスとの違いはココだ!

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   「サブスクリプション」という言葉が広く知られてきたのは1年ほど前からだが、さまざまな「サブスク」サービスが、それ以前から展開されている。

   アマゾンやアップルなどのGAFA企業や、大手ストリーミング配信会社などの海外勢以外のサービスで、身近になっている「サブスク」サービスは現在、どれほどあるだろうか――。本書「サブスクリプション経営」によると、これまでのサブスクをめぐる概況は、日本の企業にとってはビジネスとして「まだまだ売上維持・拡大は難しい」のが実情という。

   その理由は、サブスクビジネスが、IT化が進んだ現代ならでは新ビジネスなのに、多くの企業では従来の課金ビジネスと同一視してアプローチしており、市場を開拓してきれないためだという。

「サブスクリプション経営」(根岸弘光著、亀割一徳著)日本経済新聞出版社
  • 「サブスクリプション」導入で、企業改革?
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消耗品の定期便、飲食店の定額サービス......

   日本でサブスクリプション・ビジネス(継続課金ビジネス)の注目度が大きくアップするきっかけになったのは、サブスクの管理プラットフォームを提供する世界最大手で、米国のズオラ(Zuora)社が2018年11月に東京で開いたカンファレンスだったという。

   このイベントの直後から、産業界でサブスクサービスへの取り組みが目立つようになった。

   「売り切り」モデルのビジネスを踏襲してきた日本の「モノ売り」の会社が、消費者の体験や価値観にアピールして「利用」を促しながら、成長の糧にするモデルの提案に共感。当初はITサービスに限られていたが、ITの進化・拡大や物流環境の改善などで、他の業種でも参入が容易になり、電化製品やその消耗品の定期お届けサービス、飲食店の定額サービス、ネットを使った製品の定額宅配サービスなど、展開は多彩になっている。

   現代では商品が多様化、多種類化してはいるが、多数の類似商品が出回るようになり、じつは商品間では差がなくなってコモディティ化も進んでいる。

   そのために企業間では価格競争に突入し、そこへ高度に効率化を実現している海外企業が台頭、国内市場でも劣勢に立たされているという。この価格競争から逃れるために、モノ売りからの転換が模索されるようになり、2010年を過ぎたころから、「サブスク」ビジネスが取り沙汰されるようになり、その後、年を追って各企業はサブスクのサービスへの取り組みを拡大してきたのだ。

「企画倒れ」多い日本企業

   このサブスク市場でも、アマゾンやアップル、動画ストリーミング配信のネットフリックス、音楽配信のスポティファイなどの海外企業が続々とビジネスモデルを構築し、売り上げ拡大などに成功している。

   海外の企業ではまた、デジタル版購読が伸びているニューヨーク・タイムズ紙や、毎月定額でヒゲ剃りの替え刃を提供して成功した会社のように、従来ビジネスからの移行に成功した例も数多い。

   本書によると、日本企業のサブスク事業は一部の成功例にとどまり「企画倒れに終わりそうな状態の企業が多いのが実状」だ。「月額課金サービスを提供してみたものの、売り上げは拡大せず、それどころか、トライアルを始めても顕著な成果がない」というありさま。

   どうして、そうなってしまったのか――。それは、日本の企業の多くが相変わらず「サブスク」ビジネスを「単なる月額課金ビジネス」と考えているからだ。

   本書はこう断言し、サブスク参入企業に根本からの再考を促す。

   「サブスク」ビジネスの本質は、顧客と直接契約することで、サービス利用頻度などの個々の顧客動向情報を入手できるようになるので、それを分析し、新た顧客体験の提供や価格改定を高い頻度で行うことができること。重要なのは、継続的に商品やサービスを購入してもらうことだ。

   そのためには、データ分析を実行するためのIT基盤だけでなく、素早く意思決定を行い実行できるような、社内外の組織が必要になる。そのことを含め、経営全般にかかわることなのだ。

   著者の根岸弘光さん、亀割一徳さんはともに、世界最大級のグローバル経営コンサルティング会社の一つ、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社のコンサルタントを務める。先端技術を用いた企業システム刷新や「サブスク」モデルによる新規事業案件を担当している。

「サブスクリプション経営」
根岸弘光著、亀割一徳著
日本経済新聞出版社
税別900円

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