「企画倒れ」多い日本企業
このサブスク市場でも、アマゾンやアップル、動画ストリーミング配信のネットフリックス、音楽配信のスポティファイなどの海外企業が続々とビジネスモデルを構築し、売り上げ拡大などに成功している。
海外の企業ではまた、デジタル版購読が伸びているニューヨーク・タイムズ紙や、毎月定額でヒゲ剃りの替え刃を提供して成功した会社のように、従来ビジネスからの移行に成功した例も数多い。
本書によると、日本企業のサブスク事業は一部の成功例にとどまり「企画倒れに終わりそうな状態の企業が多いのが実状」だ。「月額課金サービスを提供してみたものの、売り上げは拡大せず、それどころか、トライアルを始めても顕著な成果がない」というありさま。
どうして、そうなってしまったのか――。それは、日本の企業の多くが相変わらず「サブスク」ビジネスを「単なる月額課金ビジネス」と考えているからだ。
本書はこう断言し、サブスク参入企業に根本からの再考を促す。
「サブスク」ビジネスの本質は、顧客と直接契約することで、サービス利用頻度などの個々の顧客動向情報を入手できるようになるので、それを分析し、新た顧客体験の提供や価格改定を高い頻度で行うことができること。重要なのは、継続的に商品やサービスを購入してもらうことだ。
そのためには、データ分析を実行するためのIT基盤だけでなく、素早く意思決定を行い実行できるような、社内外の組織が必要になる。そのことを含め、経営全般にかかわることなのだ。
著者の根岸弘光さん、亀割一徳さんはともに、世界最大級のグローバル経営コンサルティング会社の一つ、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社のコンサルタントを務める。先端技術を用いた企業システム刷新や「サブスク」モデルによる新規事業案件を担当している。
「サブスクリプション経営」
根岸弘光著、亀割一徳著
日本経済新聞出版社
税別900円