JR東海の高山本線と太多線、長良川鉄道の越美南線の3路線が乗り入れる美濃太田駅。その駅前の美濃加茂シティホテルの一角にある「caf?花笑み」を活動拠点としてスタートした、障がい者による障がい者支援の団体「一般社団法人 つながる未来(あした)」がある。
現在、この団体ではフェアトレードされたオーガニックなコーヒーの販売と障がい者の悩みごとを物語にした本の出版を準備中だ。
障がい者が障がい者の悩みを聞く
「つながる未来(あした)」が立ち上がったきっかけは、caf?花笑みの店主でもあり、団体の理事長を務める藤吉義純さんと障害をもつお客さんとの会話から始まった。
その内容は、障がい者のお客自身の悩みではなく、作業所で働いている同じ障がい者の方々の、実情と彼らの未来についての憂いだった。
健常者と障がい者との見えない壁を取り除き、障がい者のつぶやきを知ることが大切であると、感じていた藤吉さんが、常連客や知人に声をかけ障がい者と健常者をつなぐ場として、月に一度「つながるカフェ」と題して両者が対話のできる会合を設けることになった。
その場は、障がい者の悩みと不満が溢れ出し、ふだん健常者が腫れモノを触るように聞きたくても聞くことができなかったことを聞けた会であったという。
これをきっかけに、もっと障がい者のことを知らせることが大切と、美濃太田駅で作業所に通う障がい者の方々に、取材を始めた人物がいた。その人は10数年ほど前に病を患い、左半身に麻痺が残りながらも、団体の社員であり、今もA型作業所(一般の就労が難しい障がい者が、一定の支援を受けながら働くことのできる事業所)で働いている坂本義一さんだ。自身が障がい者でもあることから、本音に近い悩みや不満を聞き出すことができた。
電話取材を加えて100人ほどの話を聞き、過去に出版社の編集制作に携わっていた経験を活かしてレポートをまとめた。その内容の多くは、障がい者の日常生活における問題であり、健常者がほんの少し意識を変えるだけで解決できるものだった。
たとえば、聴覚障がい者が、病院で医者の話を聞こうとしても、マスクで唇が読めない。色弱の方からは、近年祭日が固定されていないので、赤色で表示されていても休日かどうかわからないなど、健常者がそんな方々の不便さを知っていれば、簡単に問題を解決することができるようなことばかり。見方を変えれば、ビジネスのヒントとして、貴重なレポートになると感じた。同時に、障がい者の不平不満、悩みがビジネスになるのなら、ハンディキャップは「資源」ではないかという意識が芽生えたのは、坂本氏の取材の効果といえる。