新型コロナウイルスの猛威の中でも、依然として日本製品の不買運動が止まない韓国にあって、異常なまでに人気を集めている日本製品がある。
任天堂の家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」だ。価格が急騰して品切れ状態となっているという。いったい何が人気を集めているのか。韓国紙で読み解くと――。
戦いや残忍な場面がない、ただ島で動物と暮らすゲーム
「ニンテンドースイッチ」の人気を報じているのは朝鮮日報(2020年4月10日付)「韓国でニンテンドースイッチが高騰」だ。こう伝えている。
「任天堂の家庭用ゲーム機『ニンテンドースイッチ』が新型コロナウイルスによる影響で世界的人気を集めている。2020年3月20日に発売されたゲーム『あつまれ どうぶつの森』はコロナ事態による巣ごもり需要が広がるなか、親子で楽しめるゲームとして注目を集め、価格が急騰し、品切れとなるケースも出ている」
36万ウォン(3万2100円)だったニンテンドースイッチの価格は、70万ウォン(6万2300円)近くまで上昇。「どうぶつの森」のデザインの特別版には90万ウォン(8万100円)の高値が付いた。販売店では番号札を受け取った人が長蛇の列を成し、「マスクを買うより大変だ」という声が漏れるほか、新製品を購入して高値で転売する「ニンテク(任天堂と財テクの造語)」という新語まで生まれているという。
いったいどんなゲームなのか。朝鮮日報が続ける。
「『どうぶつの森』は任天堂のロングセラーだ。これまでにシリーズ8作目まで発売された。ゲームの特徴は目標やエンディングがないことだ。敵と戦う場面も残忍な場面もない。無人島に住み、森の動物と対話し、釣りをしながら、好きなように島を作っていく単純な内容だ。特定の季節や時間にだけ行われるイベントがあるほか、毎日少しでも管理しなければ、雑草だらけになったり、家の中のゴキブリが発生したり、野菜が傷んだりする......」
コロナで家に閉じこもりながら「もう一つの人生を送る」
刺激の強いゲームが多い中で、特にこれといった特徴のないことが、逆に刺激的なゲームに飽きたユーザーに魅力となっているという。韓国でも現在、コロナの影響によって全国の小中高の休校が続いている。家にとどまり退屈を感じている子どもた大人たちが、このゲームの中で自由に動き回り、満足感を得ているという分析もある。40代のユーザーは朝鮮日報の取材に対し、
「ゲームの中のキャラクター、ノグル(たぬきち)にカネを借り、一生懸命釣りや採集をして、カネを返し、家を拡張している。ゲームの中でもう一つの人生がある感覚だ」
と話した。ゲームによってヒーリングを感じ、癒されているようだ。
「どうぶつの森」は2001年4月、任天堂の第4世代の家庭用ゲーム機「ニンテンドー64」用のソフトとして初めて発売された。1998年6月に新たなゲームプロジェクトが社内で発表された際には反応は冷ややかだったという。「こんなゲームを誰が買うのか」という酷評が多かったそうだ。
朝鮮日報は、こう結んでいる。
「ニンテンドースイッチが売り切れる背景にはコロナの影響も大きい。韓国に輸入されるニンテンドースイッチは中国製だ。コロナの影響で中国工場が1~3月に稼働できず、今になって稼働率を引き上げている状況だ。韓国の販売代理店、デウォンショップは4月1日、『販売商品の数量、販売日程など詳細を告知できない』と発表した。販売商品の数量、販売日程など詳細を告知できない韓国任天堂は今月上旬に追加供給を行うと説明した」
単純なヒーリングゲームという要素以外に、コロナの影響による品不足がよけいにブームを煽っているわけだ。
(福田和郎)